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スタジオジブリが作品を無償提供!! タダより安いものはない?

スタジオジブリ

千と千尋の神隠し」や「崖の上のポニョ」などの

画像を無償で提供し始めた。

使用条件は一つだけ。

「常識の範囲でご自由にお使いください。」

 

●今月から、スタジオジブリ作品の場面写真の提供を開始します

http://www.ghibli.jp/info/013344/

 

ファンたちは

「画期的なことだ!」

「ついにやってくれた!」

と大喜びだ。

 

これ、素直に賞賛していいのだろうか?

 

ブラックジャックによろしく

過去にも「どうぞご自由にお使いください」と言った権利者はいた。

 

2012年、漫画家の佐藤秀峰氏は自身の作品である

ブラックジャックによろしく」の

二次利用をフリーにすると宣言した。

 

同時に利用規約も公開しているが、

ほぼ全ての利用についてフリー化している。

ネットにのせるのも、パロディにするのも、映像化するもの、

商用利用も何でもありだ。

ただし、

タイトルや作者の名前はしっかり表示するという条件が付いている。

 

これにより、「死にコンテンツ」となっていた同作品から

再び大きな収入を得ることができたという。

 

●「ブラックジャックによろしく」が2次利用フリーに 商用・非商用問わず自由に利用可能

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1208/20/news098.html

 

●「ブラックジャックによろしく二次利用フリー化1年後報告 前編

https://note.com/shuho_sato/n/na1c3e7c1aa60

 

 

くまモン

熊本のゆるキャラ「くまもん」も無償利用できる。

利用にあたっては事前の申請が必要で、

熊本県や県産品のPRになると認められた場合にかぎり、

OKということになっている。

 

熊本県の税収はくまモン効果の恩恵を受けている。

 

くまモンとサプライズロゴで熊本を盛り上げよう!

https://kumamon-official.jp/kiji0031655/index.html

 

 

GLAY

ロックバンドのGLAYはブライダル利用に限り、

楽曲の著作隣接権の利用料を無償とした。

 

無償にしても必ずしもGLAYのフトコロは痛まないし、

逆に著作権でしっかり儲けが出る仕組みになっていることは、

以前解説した通りだ。

 

●ブライダルでのGLAY楽曲の使用に関して

https://www.glay.co.jp/news/detail.php?id=2633

 

GLAYは「かっこいいアニキ」なのか問題を解決する

https://www.money-copyright-love.com/entry/2018/09/25/091631

 

 

任天堂

任天堂は、ゲーム動画(実況を含む)をYouTube等に上げることについて、

権利主張しないと宣言した。

 

同時にかなり詳細なQ&Aを公開し、

「この場合はOK、この場合はNG」を分かりやすく示している。

収益化についても条件つきで認めている。

 

これにより、自社のゲームのプロモーションを狙っているのだろう。

 

●ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン

https://www.nintendo.co.jp/networkservice_guideline/ja/index.html

 

 

それぞれの権利者が彼らなりのマーケティング戦略の中で、

無償提供を行っている。

マクドナルドの「スマイル0円」と同じだ。

 スマイルはダダでも、ビッグマックはタダではない)

 

多くの権利者が、作品とファンとの新しい関係づくりのために

工夫をこらし、知恵を絞っているのだ。

 

丸投げ

そこへ、今回のジブリの宣言である。

 

みんなが知恵を絞って利用条件を考えている中で、

ジブリはこう言い放った。

「常識の範囲でご自由にお使いください。」

 

・・・丸投げかよ!!

 

本当の意味での「丸投げ」なら、それはそれで凄い覚悟だ。

でも、おそらくそうではない。

 

「常識の範囲」というが、誰の「常識」なのだろう?

ファンそれぞれの常識?

商売利用したい人の常識?

ジブリの常識?

世間の常識?

念のため言っておくと、世間の常識なんてものはアテにならない。

多くの法的トラブルは、

「このぐらいは常識の範囲だろう」という

各人の常識が食い違うことから生まれている。

 

もしBL(ボーイズラブ)の同人誌の愛好家が、

自分の「常識」に照らしてジブリのキャラクター同士を

〇〇させたら・・・

それが大ヒットして大儲けしてしまったら・・

おそらくジブリは「それも常識の範囲です!OK!」とは言ってくれない。

法的リスクを負うのは、愛好家自身だ。

 

あなたの会社にもいないだろうか?

「君にすべて任せる!」と言っておきながら、

失敗すると「ほらみろ、私の言うとおりにやらないからだ!」と

説教する上司が・・・。

 

 

作品とファンとの新しい関係づくりのプロセスの中で、

色んな試みがあることは良いことだ。

だから、今回のジブリの試みも、悪いことではない。

でも、ファンに「考える仕事」と「リスク」を丸投げするやり方を、

私は好きになれない。

 

Twitter

https://twitter.com/Kei_Yoshizawa_t

 

www.money-copyright-love.com