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タレントの独立騒動!テレビ局はどちらの味方をすべきか?(2)

タレントの独立・移籍騒動が続いている。

 

●インスタ&HP削除…森七菜が大手事務所へ移籍でトラブル発展か

https://friday.kodansha.co.jp/article/157555

 

背景にある原因は、

タレントと芸能事務所の関係が大きく変化していることだ。

 

前回の記事をまとめると以下の通り。

 

・芸能事務所は金銭的なリスクを負ってタレントの卵を育てるが、

 ブレイクするのは100人に1人。

・ブレイクタレント1人の稼ぎによって投資を回収し、

 また新たに100人のタレントを育てるのが芸能事務所のビジネスモデル。

・タレントは「商品」であると同時に「人間」でもあるので、

 自由に独立する権利をもっている。

・「これから投資を回収しよう」と思っていた矢先に

 収穫期のタレントが独立してしまうのは事務所にとって大ダメージ。

・事務所は契約や政治力をつかってタレントの独立を阻止しようとする。

 

こういう枠組みの中で秩序を保ってきた芸能界だったが、

ある事件をきっかけに全てが変わってしまった。

そう、SMAP謝罪事件だ。

 

SMAP謝罪事件とその後

SMAPのメンバーがジャニーズ事務所から独立しようと画策し、

事務所はそれを阻止することに成功した。

SMAPは生放送のテレビ番組で謝罪することになった。

「誰に」対して「何を」謝罪しているのか、

曖昧なままに終わった“謝罪ショー”だったわけだが、

多くの人には分かっていた。

芸能界の掟をやぶって謀反をおこしたことを、

ジャニーズ事務所に対して謝っていたわけだ。

 

事務所がタレントに対して完全勝利したかに見えた。

 

しかし、ジャニーズはやり過ぎた。

こんな“公開処刑”のようなことをすれば、注目をあびる

「事務所とタレントの契約は、人権無視の奴隷契約なんじゃないか?」

と思う人が増える。

公正取引委員会公取)が動いた。

 

最終的には公取ジャニーズ事務所を「注意」することにつながった。

SMAPを謝罪させたことを直接注意したわけではないが、

 謝罪事件が発端になったことは間違いない)

 

●元SMAPの3人めぐって…公正取引委員会ジャニーズ事務所を「注意」した真意とは

https://bunshun.jp/articles/-/42808

 

これを機に芸能事務所に対する世間の目が非常に厳しくなった。

タレントを契約で何年間も縛り付けたり、

辞めたタレントの活動を妨害したりしづらくなった。

 

批判に対応するために、日本音楽事業者協会音事協)が

事務所とタレントの契約書の「ひな型」を改訂した。

 

●専属芸術家統一契約書改定のお知らせ:日本音楽事業者協会

https://www.jame.or.jp/information/%E5%B0%82%E5%B1%9E%E8%8A%B8%E8%A1%93%E5%AE%B6%E7%B5%B1%E4%B8%80%E5%A5%91%E7%B4%84%E6%9B%B8%E6%94%B9%E8%A8%82%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B/

 

それまでは

「事務所をやめたら3年間は芸能活動を禁止します(競業避止義務)」

といった契約内容も珍しくなかったが、

これには「効力がない」と明記された。

(人間には職業選択の自由があるのだ!!)

 

また、それまでは

「契約期間は5年間。事務所が希望すれば何度でも延長できます」

という契約内容も多かったが、

事務所が一方的に延長できなくなった。

(「投下資本に不均衡があるとき(ちょうどブレイクし始めたタイミング)」

 だけは、延長できる。

 ただし、その場合でも移籍金を払えば移籍可能)

 

音事協がひな型を変えたことの影響は決定的に大きい。

音事協は、ナベプロホリプロ吉本興業・・・など、

日本を代表する芸能事務所が集まった非常に力の強い団体だ。

多くの事務所が音事協の見解に従うようになる。

 

こうして、事務所とタレントのパワーバランスが崩れ、

タレントが独立しやすい環境が整っていった。

 

これが、今あちこちで起きている独立騒動の背景だ。

 

ジャニーズ事務所が“謀反人”を処刑し権力を誇示することで、

かえって力を失うことになってしまったのだ。

 

個人の時代へ

タレントと事務所の契約関係が変化したことに加え、

メディアの環境が変わったことの影響も大きい。

 

YouTuberに代表されるように、

事務所の力に頼らず自力で発信し有名になるタレントが増えている。

本当に自分の才能に自信があるのなら、事務所に所属する必要もないのだ。

組織ではなく個人で戦う時代の幕が開いている。

 

「結果として最大の勝者となるのは・・スーパースターの方なのだ。」

(アニータ・エルバース著

 「ブロックバスター戦略~ハーバードで教えているメガヒットの法則」)

 

個人の時代では、芸能事務所の経営は非常に難しくなる。

お金をかけてタレントを育てても、

「さあこれから収穫期だ」というときにタレントが独立してしまう。

この流れを止めることはできない。

それに気づいた事務所の中には、戦略を転換して

映画製作などのコンテンツ制作に軸足を移そうとしているところも

あるようだ。

劇的な構造変化が起きるだろう。

 

もしタレントと事務所が対立し、

テレビ局のプロデューサーがどちらかを選ばなくてはいけなくなったら、

どうすれば良いだろう?

今までなら事務所の意向を忖度するのが正解だったわけだが、

これからは違う。

事務所を怒らせることになっても、

タレントをかばう方が戦略的に正しい。

そんな時代がすぐそこまで来ている。

 

タレントは、自分の実力だけが問われるようになる。

厳しく、そしてワクワクする未来が待っているのだ。

 

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https://twitter.com/Kei_Yoshizawa_t

 

 

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