マネー、著作権、愛

創作、学習、書評など

死者に思いを。

おけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

 

「死者の権利」について

この1年を振り返ると、

「亡くなった人の情報の扱い」について

注目の集まることが多かったと感じる。

 

京都アニメーションの放火殺人事件では、

被害にあった方の実名を報道すべきか?

について全国的に熱い議論が繰り広げられた。

 

京アニ放火殺人と実名報道 メディアはどう向き合ったか

https://www.asahi.com/articles/ASM934GRLM93PTIL00R.html

 

「遺族に取材が殺到して迷惑がかかるから匿名にすべきだ!」

「正確な情報の発信が報道機関の使命だ!」

など、さまざまな意見が出た。

 

また、最近では相模原市福祉施設の事件の被害者遺族が

亡くなった娘の名前を公表したことが話題となった。

 

●美帆が生きた 甲Aではなく 

 遺族、娘の名前を初公表…相模原殺傷きょう初公判

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200107-OYT1T50267/

 

母親は

「(娘が)甲さんと呼ばれることは納得いきませんでした。美帆という名前があるのに」

「娘が一生懸命に生きた証しを残したい」

と語っているという。

 

また、年末の「NHK紅白歌合戦」では、

人工知能を使って再現された美空ひばりが出演し新曲を披露した。

これを見て「すばらしい!」と絶賛する人がいる一方、

親友の中村メイコ氏は「いやだ」と拒否感を示した。

彼女以外にも「死者の冒涜にあたるのではないか?」と感じた人が

少なくなかったと思う。

 

●“AI美空ひばり”は「嫌だ」 親友の中村メイコ語る

https://www.1242.com/lf/articles/220704/?cat=entertainment&pg=happy

 

 

人は死ぬ。

死んだ人の思いは、あとに残された者が想像するしかない。

 

死者の顔、死者の声、死者の名前、

彼らが生きていたという事実そのもの。

どの情報が守られるべきなのだろう?

 

どんな方法で守るのが良いのか?

秘密にすべきなのか?

公表をしたうえで、名誉を汚すような扱いだけを禁止するべきなのか?

 

そして、それを扱う権利は誰のものか?

親族なのか?

親友なのか?

メディアなのか?

 

それとも、

死者は「歴史の一部」なので、

全ての人が等しく死者の情報に接し、

自由に扱うことができるようにすべきなのか?

 

 

今後テクノロジーが進歩し「死者の意思」が

ある程度は正確に分かるようになるかもしれない。

(例えばAIとブロックチェーンを活用した「AI遺書」など。)

それでも「死者の意思」に従うことが常に正しいとは限らない。

例えば坂本竜馬のAI遺書が

「姉あてに書いた手紙、公表されるのは恥ずかしいからやめて」

と訴えたとしたら。

貴重な歴史的資料なのに。

美空ひばりのAI遺書が

「もう紅白に出るのはうんざり。

 今年は「絶対に笑ってはいけない」に出たいのよ」

と言い出したとしたら。

それこそ「冒涜」になってしまうのでは?

 

「死者の権利」については、誰にも正解がわからない。

これが現状だ。

残された我々は、

今後も亡くなった大切な人たちに思いをはせるしかないのだろう。

 

著作権と死者

著作権の世界では、死者の扱いについては割とこまかく決められている。

 

作者の死後も作品の著作権は残る。

通常は、作者の死後70年だ。(なが!)

著作権はお金や不動産などと同じように財産として扱われる。

遺族に相続されることが多いだろう。

 

楽家の平尾昌晃の遺産である著作権をめぐっては、

遺族間の“泥沼バトル”がメディアで面白おかしく取り上げられた。

 

●平尾昌晃さんの遺産60億円バトルで浮上「音楽印税ってそんなに儲かるの?」をプロが解説

https://nikkan-spa.jp/1513199

 

 

「財産」ではなく「人格」という面でも配慮がある。

作者が死んだ後であっても、作者が嫌がるような作品の改変や、

不名誉な取り扱いをしてはダメということになっている。

著作権法第60条)

そして、その権利を扱える人は誰か?も決まっている。

原則としては遺族だ。

さらにその順位まで丁寧に書いてある。

「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」の順になっている。

遺言があればそれに従うことになる。

著作権法第116条)

先々のことまで、ひじょうに細かく決められている。

 

 

素晴らしい作品は作者の死後も世代を超えて愛される。

それが理解されているから、

法律も長期的な視点にたった設計になっているのだ。

 

上記の「死者の権利の取り扱い問題」について、

著作権の制度は参考になるかもしれない。

 

去年の記事のふりかえり

著作権をメインテーマにしているこのブログだが、

去年は幅広い内容を扱った。

 

 

人工知能著作権の観点から考察した。

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美術品について掘り下げて考えた。

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著作権を強くするか?弱くするか?

つまり、右派と左派の大きな思想の流れについても概観した。

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世にはびこるJASRAC批判にも反論した。

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歌手とレコード社の大きな戦いについても取り上げた。

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ネット上で話題の「ダウンロード違法化」も解説した。

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日本語、英語、その他ことばの問題についても

歴史や脳の視点から研究した。

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著作権と同じくらい有名な肖像権についても

ストーリー形式で説明した。

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著作権について契約書を結ぶ時のポイントについても

開示している。

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一般に「著作権」といえば特殊な法律の話だと思われているが、

著作権を入り口にした広がりと深みのある世界が存在するのが

分かってもらえると思う。

 

今年は

去年は書きたいことが多かったので、

話題が広がりすぎてしまった。

 

今年はあらためて著作権の基礎に立ち返ろう。

著作権についての基本的な話を、

どんな解説書よりも分かりやすく説明していくつもりだ。

基礎がわかったうえで改めて上記の記事を読んでもらえれば、

さらに理解が深まって良いと思う。

文章以外の表現形式もためしてみたい。

 

読者のみなさま。

今年もお付き合いいただけると幸いです。

よろしくお願い申し上げます。

 

吉沢計

 


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あなたの作品がハリウッドで映画化!?~悲劇の契約~(3)奪われた名声と大金

日本原作のハリウッド映画化。

満足できる契約条件にたどり着くまでの道のりは遠い。

 

ここまでは2つのパターンの悲劇を見てきた。

・映画が制作されず、塩漬けになるケース

・映画は制作されるが、無残な姿に改変されるケース

 

今回は3つめのパターンを見てみよう。

 

3度目の正直!

芸漫社でを退社した角野君。

ある朝目を覚ますと・・・これまでの出来事は全て夢だった!

 

「良かった・・・次こそは失敗しないぞ。

 3度目の正直だ!」

 

出社してみると、社内の雰囲気が浮ついている。

ハリウッドのゴールドブラムというプロデューサーから、

マンガ『電脳ウォーズ・ヒロシ』の映画化へのオファーがあったのだ。

 

角野君は法務担当として素早く対応する。

社内を落ち着かせ、バックアップ体制を整える。

じっくりと相手と交渉し、少しずつ満足できる条件を獲得していった。

 

改変権の交渉

しかし、ゴールドブラム氏がどうしても首をたてに振らない条項があった。

「映画の内容に関する決定権はゴールドブラム側にある」という点だ。

 

しかしここは簡単に譲るわけにはいかない。

相手に決定権を認めてしまうと、

『電脳ウォーズ・ヒロシ』が

見るも無残な駄作に作り変えられてしまうかもしれない。

 

角野君は改変権については特に重点的に主張した。

 

「この作品は原作者の細見先生がクリエイターとしての魂をこめて

 書き上げた血と汗と涙の結晶なんです。

 先生が納得できないものを作らせるわけにはいきません。

 最終的な脚本に対して我々のapproval(承認)を得なければ、

 映画化できないという条件が必要です。

 ここは譲れません」

 

しかしゴールドブラム氏も手ごわい。

 

「ミスター角野。

 きみはハリウッドの仕組みをよく理解していないようだ。

 我々は数百億円の製作費をかけて映画を作る。

 脚本制作の段階で無数のスタッフがキャスティングや撮影準備に動き、

 すでに多額の費用がかけられている場合もある。

 それなのに原作者の個人的な好みでストップがかけられてしまえば、

 それだけスケジュールが延び、さらなる費用がかかる。

 そんなリスクは冒せないことは、

 あなたも我々の立場を想像すればわかるはずだ」

 

「し、しかし、日本では原作者を大切にする文化があるんです。

 原作を大切にしているかどうかは、作品のファンが見れば分かります。

 映画を成功させるためにも、「原作者の承認を得ている」という形を

 担保しておくことが重要なのではないですか?」

 

「あなたの国の文化や商慣習は理解するが、

 リスクをとって映画を作る我々のことも理解してほしい。

 承認権は認められない」

 

何度も交渉を繰り返すが、

一歩も前進のないまま3か月が経過した。

 

作戦変更

どうすれば良いのか・・・

なんとかして契約を成立させたいが、このままでは決裂してしまう。

 

ここまでの感触では、承認権はどうやっても無理なようだ。

それでも「原作レイプ」だけは防ぎたい・・・。

 

角野君は方針を修正した。

作戦は2つだ。

 

まずは「作品内容のここだけは絶対に変えないで!」

というポイントを決めよう。

例えば

「主人公は普通の高校生であること」

「ゲームを通じて良い友人ができるエピソードを入れること」

などだ。

ポイントを限定すれば、相手も受け入れやすくなるだろう。

細見先生と相談して大事な要素(key elements)を挙げていった。

交渉の過程で絞り込むことになるかもしれないから、

優先順位も決めておいた。

契約で「ここだけは変えない」と決めれば、

それが作品の❝重石❞となり、

原作から遊離した映画になることを防げるだろう。

 

もう1つの作戦は❝嫌がらせ❞だ。

映画を「承認する権利」は諦めるとしても、

「気に入らないときは嫌がらせできる権利」は確保しよう。

具体的にはこんな感じだ。

「もし最終脚本に対して原作者とゴールドブラム氏の意見が対立し、

 1か月以内に解決しない場合は、

 電話会議を開催する。

 その電話会議には、監督とトップの脚本家を出席させないといけない。

 この電話会議を反映して脚本を修正し、

 それでも意見が対立し、1か月以内に解決しない場合は、

 もう1度電話会議を開催する。

 そこにも監督とトップの脚本家を出席させないといけない。

 その後1か月以内に解決しない場合は、

 ゴールドブラム氏の意見が優先される」

 

これなら「予防効果」があるはずだ。

ゴールドブラム氏にとっても、

忙しくてギャラの高い監督や脚本家をわざわざ会議に召集するのは、

気が重い作業だろう。

電話会議をさけるためにも、

こちらの意見を聞こうという気になるに違いない。

 

角野君は

「大事な要素」と「嫌がらせする権利」の

2つの作戦で、あらためてハリウッドとの交渉にのぞんだ

 

それからさらに3か月・・。

 

タフな交渉の結果、「大事な要素」は数を大幅に減らされ、

電話会議の回数は1回だけとなったが、

ついに合意に達することが出来た。

契約成立だ!

 

これだけやれば、原作レイプが起きる可能性は低い。

細見先生にも原作ファンにも喜んでもらえる映画になるだろう。

もう悲劇は起きない。

これで一安心だ。

 

3度目の悲劇

数年後、ハリウッド映画『電脳ウォーズ・ヒロシ』が

全世界で公開された。

 

内容的にもよく出来ている。

原作の良い部分をいかしながら、現代風のアレンジもきいている。

ゴールドブラム氏がこちらの意見をかなり聞いてくれたおかげだ。

 

日本の原作ファンの評価も上々だ。

「子供の時に読んだ気持ちを思い出したよ。

 原作愛を感じる」

 

原作を知らない海外のファンにも受け入れられ、

興行成績的にはスマッシュヒットとなった。

 

良かった。良かった。

 

しかし・・

 

息子と一緒に映画を観に行った細見先生の表情がすぐれない。

どうしたのだろう?

事情をきくと息子がガッカリしているというのだ。

「どこにもお父さんの名前が出てなかったよ!なんで!?

 友達にも自慢してたのに・・・」

 

そんなはずはない!

契約書には原作者の名前を映画の中で表示するように、

はっきり書いてあったはずだ。

 

慌てて角野君が映画をみてみると・・・あった。

確かに

「Based on the original comic ❝Computer Wars Hiroshi❞

 created by Hosomi Kazuhiro」

と出てはいる。

でも、延々と続くエンドロールの真ん中あたりに

小さく出ているだけで、全く目立たない。

これでは、海外の映画ファンには細見先生の原作だと伝わらないじゃないか。

実際、海外での評価はマイケル・ポイ監督に集中している。

「監督の創作した独創的な世界観は最高にクールだ!」

SNSで見るのはそんな声ばかりだ。

 

しかし残念なのはそれだけではなかった。

 

最初の契約金だけは受け取っていたが、

映画がヒットしたときはボーナスが出ることになっていたはずだ。

それがいくら待っても振り込まれてこない。

これは変だ。

 

ハリウッドに問い合わせてみたが・・・

 

「追加の支払いはありません。

 契約書の45ページをみてください。

 この計算式により、製作費や配給費、

 その他いろんな費用が控除されます。

 まだまだボーナスが発生するには程遠い状態です」

 

そんな・・・!

 

映画化は成功したものの、真のハッピーエンドとはならなかった。

むしろ映画が成功したからこそ、

「原作者としての名声」や「手にしたはずの大金」が

奪われてしまったような気持ちだ。

 

またもや悲劇は避けられなかった。

角野君が会社をやめるには至らなかったが、

ハリウッド相手の難しさを

改めて思い知らされたのだった・・。

 

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角野君がもう一度だけハリウッドと戦う様子は、

来年えがいていこうと思う。

 

今回の記事は、経験豊富で百戦錬磨の福井健策弁護士のセミナー

「日本原作の海外ライセンス攻略法 対ハリウッド契約を中心に」

を大いに参考にさせていただき書いものです。

深く感謝申し上げます。

 

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来週の連載はお休みします。

 

読者のみなさま。

今年も1年お付き合いいただき、本当にありがとうございました。

良いお年をお迎えください。

 


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あなたの作品がハリウッドで映画化!?~悲劇の契約~(2)原作レイプ

日本の作品を原作にしたハリウッド映画。

契約交渉は非常にハードになる。

今回は別パターンの悲劇を見てみよう。

 

今度こそ!

先週登場した角野君を思い出してほしい。

契約に失敗し失意のうちにマンガ出版社の芸漫社をやめてしまった。

 

やる気を無くし、お酒を浴びるように飲み、眠りにつく。

 

目を覚ますと・・・平和だ。

様子がおかしい。

戸惑っていると、退社したはずの芸漫社から電話がかかってくる。

 

「角野さん、何してるんですか?

 会議が始まりますよ!」

 

彼はまだ芸漫社の社員だった。

全ては夢だったのだ!

 

会議に出てみると、役員の郷田さんや編集部の花田君など、

社内の主だったメンバーが勢ぞろいしていた。

マンガ『電脳ウォーズ・ヒロシ』に対して

ハリウッドから映画化のオファーがあり、

緊急対策会議をすることになったのだという。

 

「すごい話じゃないか!」

「条件は二の次だ。

 とにかく契約を成立させよう!」

 

浮ついた雰囲気の中、角野君は決心する。

 

「あの悲劇は、繰り返さないぞ!」

 

おもむろに立ち上がり、演説を始めた。

 

「みなさん、落ち着きましょう。

 現時点では、映画化が実現する可能性は低いです。

 それなのに相手は全ての権利を押さえにきます。

 その結果、作品の未来が奪われることになりかねません。

 そんな悲劇を私は実際に知っています。

 じっくり時間をかけて契約を詰めていきましょう。

 それが、作家さんから作品をあずかっている我々の使命です!」

 

この熱い発言がきっかけとなり、会議の流れは変わった。

契約条件にこだわる方針が決議された。

郷田さんや花田君も納得したようだ。

こうして、角野君をバックアップする社内体制は整った。

 

失敗が糧になる

角野君は猛烈に頑張った。

 

今回の相手はゴールドスタインというプロデューサーだ。

まずは相手のことを知ろう。

データベース(IMDbPro)や現地のエージェントを使って、

調査した。

大手スタジオに所属しているわけではないが、

そこそこの実績もあり、信頼できる相手のようだ。

 

「前向きに進めたい」と伝えると、契約書がPDFで送られてきた。

「手を加えたいのでWordで送ってくれ」と何度リクエストしても

送ってくれないので、

変換ソフトと人力を使って無理やりWordにした。

これで、実際の条文形式で相手と交渉できる。

 

まずは「オプション契約」という契約を結ぶことになった。

本格的な映画化契約の前に、

手付金だけを支払ってもらう契約だ。

 

この契約で、相手にどれだけの範囲の権利を与えるか。

相手からは

・全世界で

・永久に

・全言語で

・あらゆる形式で(映画、ドラマ、舞台、ゲーム、グッズ・・・)

という範囲を当然のように求められたが、

そう簡単に全部渡してしまうわけにはいかない。

「権利」は「義務」ではない。

相手に権利を渡したのに実現してもらえなければ、

作品が塩漬けになってしまうだけだ。

必死で交渉をがんばり

・全世界で

・1年半(ただしゴールドスタイン氏が1回延長できる)

・英語とスペイン語での制作

・実写映画化とその映画の全面的な利用

という範囲で合意することができた。

 

「この作品の権利は間違いなく芸漫社のものです」と

相手が納得できる証拠文書(COT)を求められたので、

早め早めに準備を進め、一通り提出し、納得してもらえた。

(そのことを契約書に書き込んだ)

 

手付金(オプション契約料)は300万円。

もし映画化がGOになり、本契約を結ぶことになれば

追加で2700万円。

本当はもっと欲しかったが、「契約を成立させたい!」という

こちらの本心は見透かされている。

今回はこの辺で手を打つことにした。

 

交渉には1年かかったが、

お互いなんとか納得できる内容に仕上がった。

角野君が(夢の中の)失敗に学んだおかげだ。

 

更なる契約へ

今度はゴールドスタイン氏が頑張る番だ。

彼はあらゆるコネを使って面白い脚本を作り、

魅力的で実現可能性の高いキャスト候補のリストを作り上げ、

メジャースタジオに売り込み続けた。

 

それから2年。

大手の「ワーナー・シスターズ」からGOが出た!

 

早速ゴールドスタイン氏から角野君に連絡が入る。

 

「ミスター角野、喜んでほしい。

 ワーナーがOKを出した。

 まだ色々と詰めるべきことは多いが、

 実現の可能性は非常に高い。

 ただし、一つ条件がある。

 私と芸漫社で結んだ契約内容にワーナーが満足していないんだ。

 ワーナーの条件であらためて契約を締結してほしい」

 

ワーナーが提示してきた契約条件は、一段と厳しいものだった。

 

彼と1年かけた交渉は一体何だったんだ・・・

また1からやり直さないといけないのか・・・

心が折れそうになりながらも、

角野君はもう一度奮起し、全ての交渉をやり通した。

 

それから更に3年・・。

山あり谷ありだったが、

正式な本契約(green lighting)の締結まで辿りつくことができた。

長かった・・・。

 

制作過程で

それからまた1年。

なかなか「撮影開始!」というニュースは聞こえて来ない。

脚本の制作や俳優・監督のブッキングが難航しているらしい。

 

それでも脚本は徐々に完成に近づきつつあるようだ。

たまには角野君にも途中段階の脚本が送られてくる。

原作からはかなりアレンジされているが、

本質的な部分は変えられていない。

作家の細見先生も「この程度なら良いですよ」と納得してくれている。

 

しかし、雲行きがあやしくなってきた。

脚本のテイストが急に変わり始めたのだ。

 

『電脳ウォーズ・ヒロシ』は、

80年代のゲームブームを背景に生まれたマンガだ。

普通の高校生・ヒロシが、

ゲームバトルを通じて個性的な仲間を増やしていく。

必殺技は「連打ハリケーン」だ。

幼なじみのガールフレンド・ミナミちゃんとの恋愛模様

作品のアクセントになっている。

物語の後半では、電脳世界の帝王・デスベーダ―が、

ゲームを通じて全国の子供たちを洗脳し世界征服を企む。

ヒロシは仲間とともにデスベーダ―に立ち向かう。

そんなお話だ。

「普通の子でも、夢中になれものを見つけたら、

 大好きな仲間ができる。

 世界を変えることだってできる!」

細見先生のそんな前向きなメッセージが込められている。

 

しかしハリウッドの最新脚本では全く違うものに変えられていた。

 

まず、ヒロシの設定が違う。

中国のカンフーマスターの息子ということになっている。

特別なカンフーの才能を活かしたゲームテクニックで、

悪と戦うスーパーヒーローだ。

ガールフレンドのミナミちゃんは、人間ですらない。

バーチャル空間で生きているAIの芸者さんだ。

ヒロシはAIミナミに恋をするが、実はこれは悪の帝国の罠だった。

ミナミに脳をのっとられたヒロシは自我の崩壊に苦しむ。

そして、さらに衝撃的な真実が。

悪の帝国を陰で操っていたのは、

北朝鮮で行方不明になってたヒロシの父親だったのだ。

さまざまな裏切り、どんでん返しを繰り返しながら、

クライマックスでは、力に目覚めたヒロシが

「Renda Hurricane!」とシャウトして敵をやっつける。

こんなストーリーになっていた。

 

これはひどい

最近の流行りを集めてきて、継ぎはぎしただけの安っぽい内容だ。

表面的な部分では似ているが、

もはや『電脳ウォーズ・ヒロシ』ではない。

 

いつもは温厚な細見先生も

「これは許せない!

 これでは作品のメッセージが伝わらない!」

と激怒している。

 

角野君からハリウッドに

「大切な部分は変えないでくれ」

と要望したが、こんな返事がかえってきた。

 

「新しく就任する予定のマイケル・ポイ監督の意向が

 強く働いたため、大きく変更することになりました。

 脚本の決定権は我々にあります。

 修正には応じられません」

 

そんな・・・!

 

悲劇再び

それから3年後、ハリウッド映画『電脳ウォーズ・ヒロシ』が

全世界で公開された。

 

日本の原作ファンからの評判は散々なものだった。

「こんなもの見たくなかった!原作レイプだ!」

 

原作を知らない世界中の映画ファンの評価も低かった。

「イマイチね。この作品、大したことないわ」

 

細見先生の周囲の人からはため息がもれた。

「なんでこんな作品にOK出したんだ。

 細見さんも金に目がくらんだのかな」

 

興業的にも大コケした。

 

多少のライセンス料は入ってきたものの、

失ったものも大きかった。

 

細見先生に映画化の話が来ることは二度となかった。

 

会社にいづらくなった角野君は、退社することを選んだ。

悲劇は避けられなかったのだ。

 

角野君はお酒に逃げ、毎晩酔っ払って眠るようになった。

これが夢であることを願って・・・

 

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最近では少しずつ減りつつあるが、

原作レイプ」は起きやすい悲劇のパターンだ。

 

日本では「原作者が大切にされて当たり前」という文化があるが、

ハリウッド相手にその常識は通用しないようだ。

巨額の製作費を投じる以上、

原作者の個人的なこだわりに左右されるのは大きなリスクになるからだ。

彼等との契約の壁は高くて厚い。

 

次回は、再び夢から目覚めた角野君が「原作レイプ」を防ぐために

奮闘する姿と、それ以外の悲劇のパターンを見てみよう。

 

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今回の記事は、経験豊富で百戦錬磨の福井健策弁護士のセミナー

「日本原作の海外ライセンス攻略法 対ハリウッド契約を中心に」

を大いに参考にさせていただき書いものです。

深く感謝申し上げます。

 

 

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あなたの作品がハリウッドで映画化!?~悲劇の契約~(1)

『名探偵ピカチュウ』、『ゴジラ』、『アリータ』など、

日本原作のハリウッド大作に注目が集まっている。

 

子供の頃に日本の作品に夢中になっていた世代のアメリカ人が成長し、

映画プロデューサーとしての権限を持つようになり

「大好きだったのマンガを俺の力で映画にしたい」

と思うようになったのだ。

 

この流れは当面のあいだ続くだろう。

 

映像化するにあたっては、当然契約書を結ぶことになる。

 

契約で起こりがちな悲劇を、

いくつかのパターンで紹介したい。

 

ハリウッドから連絡が!!

角野君は中堅の出版社・芸漫社に勤めている。

大手ではないが、マンガ雑誌を毎月出版している会社だ。

1980年代にはいくつかの大ヒットマンガを世に出したこともあり、

一部のファンからは今でも支持を得ている。

 

角野君は法務部門を担当している。

マンガ作家さんとの契約書や、

キャラクターの商品化ライセンスなどの責任者だ。

 

ある日、編集部の同期・花田君から電話がかかってきた。

声がうわずっている。

 

「お、お、おい、角野。

 至急調べてほしいことがあるんだ。

 80年代にヒットした『電脳ウォーズ・ヒロシ』ってマンガが

 あっただろ?

 作家の細見先生との契約を見てくれ。

 マンガの権利はどうなってる?」

 

「調べてみるけど・・・何かあったの?」

 

「それがな!

 ハリウッドのプロデューサーから連絡があったんだ。

 『電脳ウォーズ・ヒロシ』を映画にしたいって!!」

 

これは大きな話になりそうだ。

早速、細見先生との契約書を確認する。

 

「花田君、大丈夫だよ。

 作品の著作権は先生が持っているけど、

 「専属契約」になっているから、

 我が社が窓口になってハリウッドと交渉できるよ」

 

「そうか!良かった!

 さっそく細見先生に伝えるぞ!

 最近ヒット作に恵まれずに苦労してたから、喜ぶだろうな~」

 

それから5分後、担当役員の郷田さんから電話がかかってきた。

現場には全然顔を出さない人だ。

 

「聞いたよ!

 ハリウッドで映画化だって?

 良かったな~。

 業績が低迷していた我が社にとって、起死回生の事業になる!

 しっかりと契約をまとめてくれたまえ!」

 

小さな会社なので噂が回るのも速い。

その日のうちに、❝全社員が知っている極秘プロジェクト❞になった。

 

契約書案が来る

マンガ家の細見先生は大喜びだったようだ。

 

「『電脳ウォーズ・ヒロシ』は私の代表作です!

 ぜひとも映画化を進めてください!」

 

プロジェクトにGOが出された。

ハリウッドとの交渉窓口は法務の角野君がやることになった。

 

「前向きに進めたい」と

ハリウッドのゴールドマン氏に伝えたところ、

「まずは契約を締結したい」と契約書がPDFで送られてきた。

もちろん英語だ。

 

幸い角野君は英語が使える。

顧問弁護士とも相談しながら、内容をチェックした。

 

その内容は・・・・非常に厳しいものだった。

 

・作品の著作権のライセンスを全面的かつ独占的に相手に与える。

・映画の内容に関する決定権は相手にある。

・映画が完成して公開されるまではライセンス料は発生しない。

 などなど。

 

あらゆる面でゴールドマン氏に有利なように書いてある。

こんな契約を結んでしまって、本当にいいのか・・・。

 

編集部と打ち合わせをすることにした。

 

「花田君、これは慎重になった方がいいよ。

 めちゃくちゃ不利な契約になってるんだ。

 じっくり腰をすえて条件交渉するべきだと思う。

 もしどうしても折り合えなければ、この話は見送ろう」

 

「え!?

 冗談いうなよ!

 細見先生とは、もうお祝いパーティーまでしちゃったんだぞ!

 今さら無かった話になんか出来るわけないだろ!

 硬いこと言わずに、柔軟にやってくれよ!」

 

孤立

編集部のサポートを得られなかった角野君の孤独な戦いが始まった。

 

契約内容について、どうしても譲れないポイントだけを決め、

重点的に交渉する方針だ。

 

契約書案に直接手を加えたいが、PDFなので編集できない。

仕方ないのでメールでこちらの希望する内容を伝えることにした。

 

2週間後ゴールドマン氏から返事が来る。

 

「これが標準契約なので、変更することは出来ない。

 理解してほしい。

 私はトム・クルーズとの間にコネクションがある。

 彼にこの作品の企画書を送ったが、悪くない反応だった」

 

この話を花田君に伝えたところ、彼の鼻息はますます荒くなった。

 

「すごい話じゃないか!

 ハリウッド映画化すれば、細見先生の名前は世界中に知れ渡るんだぞ!

 そうすれば、これ以外の作品でも大きなビジネスができるじゃないか!

 そのときになって条件を吊り上げればいいさ。

 今回は条件にこだわるべきじゃないだろう!

 契約成立を最優先にしてくれ!」

 

「いや、、でも・・・・」

 

「せっかくの良い話を、細かいことにこだわって潰す気か!」

 

気が付けば、角野君は社内中から白い目で見られるようになっていた。

「あいつがうるさいこと言って、邪魔している」

と陰口をたたかれるようになった。

 

決着

周りから聞こえてくる悪口に心が折れそうになりながらも、

角野君は粘り強く交渉を続けた。

大事なところはなかなか変えてもらえないが、

いくつかの点では改善してもらうことができた。

例えば「映画が完成して公開されるまではライセンス料は発生しない」

となっていた条件を変更し、

「手付金(オプション契約料)として100万円支払う」

とすることが出来た。

 

この調子で続けていれば、最低限は納得できるところまで

たどり着けるかもしれない・・・

 

そんな見通しが見えてきた頃に、

担当役員の郷田さんから呼び出しを受けた。

 

「ちょっと今から役員会議室へ来てくれたまえ」

 

行ってみると、郷田さんと花田君が待ち構えていた。

 

「角野君、ここへ座りたまえ。

 ハリウッドから話をもらってもう半年だぞ。

 いったいどうなってるんだ。

 役員会議でもせっつかれてるんだ。

 とにかく早くしてくれ。

 聞くところによると、先方とモメてるらしいな。

 そんなことをして相手を怒らせてしまったらどうするんだ。

 君には契約をしっかりと進めてもらうように言ったはずだぞ」

 

「でも・・・お言葉ですが郷田さん、

 契約内容が非常に不利になっているんです。

 作品と作家さんを大切に思うのなら、

 簡単に譲ってはいけないと思うんです。

 具体的にはこの点が問題なんです」

 

と、契約の問題点を説明する角野君。

一通り聞き終わった郷田さんはこう言った。

 

「君の言い分はわかった。

 でもな、角野君。

 ゴールドマンさんだって人間だ。

 契約書に書いてある通りにはしないだろう。

 『電脳ウォーズ・ヒロシ』をリスペクトしてくれているんだから、

 契約書を結んだあとでも、こちらからお願いすれば

 柔軟に対応してくれるはずだ。

 それにな、細見先生は若い頃に私が担当していたことがあるんだよ。

 何とか良い思いをさせてあげたいんだ。

 わかるだろう?

 そうだ花田君、例のものを見せてやってくれたまえ」

 

花田君は1枚の紙を手渡す。

細見先生直筆の手紙だ。

そこにはこう書かれてあった。

 

「ハリウッド映画化は、長年の私の夢でした。

 条件は全く気にしません。

 とにかく契約を成立させてください。

 小学3年生の息子に「お父さんの映画だぞ」と見せてあげたいんです。

 お願いします」

 

最後に郷田さんは言い放った。

 

「今の条件でOKだと先方に伝えなさい。

 これは決定事項だ!」

 

こうして、芸漫社とゴールドマン氏の契約は締結された。

 

悲劇

契約が成立し、関係者一同大喜びだ。

 

「ヒロシ役は誰がするんだろう?トム・クルーズかな?」

「監督はマイケル・ベイって話もあるらしいよ」

「大ヒットしたら何億円と儲かるんじゃないか?

 細見先生も大金持ちだな」

 

・・・・それから3年がたった。

 

一向に映画化が進んでいるという話は聞こえてこない。

 

ゴールドマン氏はメジャースタジオへの企画の売り込みに

苦労しているらしい。

後で分かったのだが、

トム・クルーズとも単にパーティで会ったことがあるだけだった。

コネや実績もたいして無い人だったのだ。

 

角野君から「その後どうなってます?」と問い合わせても、

「頑張っている。見通しは悪くない」と返事があるばかり。

 

手付金(オプション契約料)の100万円も振り込まれていない。

支払いには条件があったからだ。

「この作品の権利は間違いなく芸漫社のものです」と

ゴールドマン氏が納得できる証拠文書を提出しない限りは

支払いはしなくて良いことになっているのだ。

細見先生との「専属契約」は証拠として出したのだが、

彼はそれだけでは満足しなかった。

30年前に作品をアニメ化した制作会社から

「我が社は何も文句を言いません」という誓約書が欲しいという。

でもそのアニメ社は潰れてしまっている。

今では誰が会社の権利を承継しているのかも分からない。

これではゴールドマン氏から1銭も受け取ることはできない・・

 

・・さらに3年がたった。

 

フランスで80年代の日本マンガのリバイバルブームが起きた。

好評だった映画『シティーハンター』の影響らしい。

 

フランスの大手テレビ局のプロデューサーから電話がかかってくる。

「『電脳ウォーズ・ヒロシ』をシリーズドラマ化したい。

 社内の決済は通っているので、

 そちらがOKならすぐにでも制作に取りかかりたい。

 ゲーム化などの商品化も見据えている。」

 

非常に良い話だ。

製作費を握っているプロデューサーからの話なので、

実現する可能性は極めて高い。

是非とも進めてほしい。

 

でも!!

無理なのだ。

 

『電脳ウォーズ・ヒロシ』の映像化権は、

ゴールドマン氏に独占的にライセンスされてしまっている。

他の人にライセンスを出すことは出来ない。

映像化権だけではない。

商品化権も押さえられてしまっているので、

ゲームなんか出せるはずが無い。

 

ゴールドマン氏に相談してみたが、

「これは私の正当な権利だ。譲る気はない。

 どうしてもと言うなら、1億円で買い戻してほしい」

と言われ、全く交渉にならない。

役員の郷田さんが期待した柔軟な対応をする気は一切ないようだ。

 

残念だ・・・。

 

他にも国内の会社などから色々と声掛けがあるが、

全てを断ることになってしまった。

『電脳ウォーズ・ヒロシ』の人気が復活するかもしれないチャンスは、

全て失われた。

 

・・さらに3年がたった。

 

いまだにハリウッド映画が実現しそうな気配はない。

 

いい加減、ゴールドマン氏との契約をやめてしまいたい!

 

しかし、契約期間はゴールドマン氏の判断で

複数回延長できることになっている。

一度手に入れた権利をタダで手放す理由はない。

芸漫社の都合で契約を終わらせることはできない。

彼は使える延長回数を全て使って、映画化のチャンスを狙い続けた。

 

・・さらに3年がたった。

 

やっと契約が切れた。

映画化は実現しなかった。

 

細見先生の夢はかなわなかった。

自分の代表作を全く活用できず、貧乏になった。

先生の息子は成人し親元を離れてしまった。

 

芸漫社は、大変な手間をかけて契約関係の作業をしたのに、

1銭も儲けることができなかった。

それどころが、契約が無ければ他から入ってきたはずのライセンス料を

失った。

角野君は会社に居づらくなり、退社してしまった。

 

完全に無駄で有害な12年間になってしまった。

これは悲劇だ。

 

教訓

こんな悲劇は本当にありえる。

 

私自身は、アメリカの巨大コンテンツ企業との交渉に

関わったことは1度しかないが、(すごく苦労した!)

日本企業の内部でどんな意思決定がされているかは分かる。

上記のような話は、ありがちなパターンなのだ。

 

ハリウッドと最初の契約(オプション契約等)を結べたとしても、

映画が製作され、公開までこぎつけられるのは、

1パーセントしかないというデータもあるらしい。

 

たった1パーセントの可能性と引き換えに、

作品の未来を全て奪うことにもなりかねないのだ。

 

契約内容にはこだわろう。

契約しない方がいい場合もある。

相手の能力を見極めよう。

相手の善意に期待するのはよそう。

交渉にも映画実現にも時間がかかることを覚悟しよう。

相手がハリウッドであっても浮足立だず、

地に足をつけよう。

 

 

次回は、また別パターンの悲劇を見てみよう。

いわゆる「原作レイプ」というやつだ。

 

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今回の記事は、経験豊富で百戦錬磨の福井健策弁護士のセミナー

「日本原作の海外ライセンス攻略法 対ハリウッド契約を中心に」

を大いに参考にさせていただき書いものです。

深く感謝申し上げます。

 

 

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NHKが大河ドラマで大失態!~ラジオの謎(フィクションです)

声優人気のおかげもあって、ラジオドラマの需要は根強い。

 

●ラジオドラマが続々復活 高まる需要の背景は?

https://www.oricon.co.jp/news/2059729/full/

 

ラジオの仕事をしている人は、

おそらく9割以上が間違えるクイズを出題したい。

架空の内容だが、現実にありえる設定だ。

 

設定

NHKは、2025年にラジオ放送100周年を迎える。

そこで、大型番組が企画された。

大河ドラマのラジオ版を制作するのだ。

織田信長が主人公の全50話の物語。

大河にふさわしいビッグネームのキャストと、

「ラジオならやってみたい」と凄いスタッフが集結する。

 

脚本:三谷幸喜(オリジナル脚本)

出演:渡辺謙木村拓哉沢尻エリカ(復帰第1作)

ゲスト出演:レオナルド・ディカプリオ(宣教師役)

音楽:すぎやまこういち

監督:新海誠

製作:NHK

 

さすがはNHK。

すばらしいドラマが出来上がった。

目を閉じて聞いているだけで、

戦国時代にタイムスリップしたかのようだ。

 

大好評だったので放送後に「らじるらじる」や「Radiko」で

インターネット配信することになった。

しかし、年配のNHKファンからは

「ネットは使えないからCDで発売してほしい」

という要望が多かった。

そこでCDでも売り出すことになった。

 

(ちなみに、NHKのラジオドラマのCDは実際にある)

●CD NHK日曜名作座宮本武蔵

https://www.nhk-ep.com/products/detail/h15143B1

 

しかし、思わぬことが起きる。

エフエム東京

「あの大河ドラマを全50話一挙にラジオ放送します!」

と特別編成を発表したのだ。

市販のCDを買ってきて、そのまま流すつもりらしい。

 

NHKはビックリしてしまう。

「そんなこと許可してないぞ!!

 あのドラマは、莫大な製作費をかけて作ったNHKのドラマだ。

 うちの許可なくそんなことが出来るはずがない!」

 

クイズ

ここでクイズになる。

 

エムエム東京は、NHKの許可なくこのドラマを放送できるか?

 

答えは、Yesだ。

 

NHKに無断で放送できる。

NHKだけでなく、渡辺謙氏やディカプリオ氏の許可も不要だ。

エムエム東京は何の問題もなく

適法にドラマを放送できる可能性が極めて高い。

ラジオ業界の多くの人が驚く結論だが、本当だ。

 

まずは振り返り

ラジオではなくテレビの大河ドラマなら、

こんなことは起こらない。

どこかのテレビ局が大河のDVDを買ってきて放送すれば、

即座に著作権侵害だ。

テレビドラマは「映画の著作物」であり、

その著作権はNHKが持っている。

NHKの許可なく放送できるはずがない。

 

しかしラジオの世界では、これが当てはまらないのだ。

 

少し大雑把な説明になるが、ラジオドラマの場合、

テレビや映画ではなく、音楽業界のルールが適用される。

以前説明した通り、

音楽の権利の世界には3種類の登場人物がいる。

 

1.作詞・作曲家

   ・・・例:小室哲哉

2.歌手(楽器を演奏する人も含む)

   ・・・例:安室奈美恵

3.レコーディングする人

   ・・・例:エイベックス

 

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「作詞・作曲家」と

「歌手」「レコーディングする人」の持つ権利には、差がある。

 

作詞・作曲家は「放送禁止権」を持っている。

テレビ局やラジオ局は、音楽を放送したければ、

小室哲哉氏から許可を得ないといけない。

そうしないと放送できない。

(実際には、JASRACやNexTone等の

 管理団体から許可をもらっている)

 

しかし、歌手とレコーディングする人には「放送禁止権」がない。

放送局は彼らに無断で放送することができる。

安室奈美恵さんやエイベックスが「ダメだ!」ということは出来ない。

(その代わり、後で管理団体を通じて使用料の配分を受けることは出来る)

 

ここまでが、以前の記事の復習だ。

この理屈を今回のNHKの事例に1つずつ当てはめてみよう。

 

脚本に当てはめ

「作詞・作曲家」にあたるのが、脚本家の三谷幸喜氏だ。

彼の書いた脚本を出発点としてドラマが制作される。

脚本には著作権があり、三谷氏は「放送禁止権」を持っている。

エフエム東京は三谷氏の許可なく放送することはできない。

 

しかし三谷氏は「日本脚本家連盟」という脚本家の組合に

権利をあずけている。

エフエム東京は連盟から許可をもらえば良い。

連盟は申し込みを受けたら許可を出す義務がある。

法律でそう決まっている。

よほどの理由(いかがわしい目的で使われるとか)がない限り、

拒否することは出来ない。

だから、脚本の「放送禁止権」はクリアできる可能性が高い。

エフエム東京は規定の使用料さえ支払えば良い。

 

出演者に当てはめ

音楽の世界の歌手にあたるのが、出演者の渡辺謙氏らだ。

作詞家の書いた歌詞を情熱的に歌うのと同じように、

脚本家の書いたセリフを感情をこめて演じるという点では同じだからだ。

歌手に放送禁止権が無いのと同様に、

渡辺謙氏らにも禁止権が無い。

そしてそれは、外国人であっても変わらない。

ハリウッドスターのレオ様であっても、

エフエム東京の放送に「ダメだ!」ということは出来ないのだ。

 

音楽に当てはめ

ドラマのBGM(劇伴)を作曲したすぎやまこういち氏は、

作曲者なので音楽の著作権(放送禁止権)を持っている。

しかしこれも脚本と同じで、管理団体が権利をあずかっている。

実際にはJASRAC等とエフエム東京

すでに結んでいる契約の範囲内で済んでしまうだろう。

 

(音楽を演奏した演奏家は上記の出演者と同じ扱い)

(音楽のレコーディングした人は以下に書くNHKと同じ扱い)

 

監督に当てはめ

今回の新海監督だが、三谷氏の脚本にはタッチしていない。

脚本に基づいてドラマを演出した立場だが、

著作権的には特段の権利がそもそも無い。

だから、新海氏の許可は全く要らない。

 

(細かい話をすると、新海氏が俳優の演技指導をしているので、

 俳優と同じ権利(実演家の権利)を持つ可能性はある。

 いずれにしても、許可が不要という結論は変わらない)

 

NHKに当てはめ

そしてNHK。

NHKは、番組を企画し、製作費を負担し、キャストやスタッフを集め、

ドラマをレコーディングしている。

これは、音楽の世界でいう「レコーディングする人」に当たる。

エイベックスが音楽を作るときにやっていることと、

同じことをしているからだ。

 

「レコーディングする人」には、放送禁止権が無い。

だから、エフエム東京の放送をNHKが止めることは出来ない。

NHKがどんなに嫌がったとしても。

これが結論だ。

 

ラジオドラマの正体

エフエム東京は、NHKが発売したCDを買ってきて、

問題なく放送することが出来る。

 

エフエム東京が音源をサーバーに取り込んだり、

Radikoでネット放送しようとすれば、

NHKにも色々と対抗手段はあるが、

CDをそのまま放送するだけならば、禁止する手立てはない。

 

CDを発売する前なら、

脚本や音楽の権利の管理についての契約や

CDパッケージの表示を工夫することで、

何とか出来る可能性もあるが、

発売後であればどうしようもない。

NHKは手をこまねいて見る(聞く)しかないのだ。

 

ラジオドラマはテレビドラマと違い、著作物ではない。

音楽業界の「レコード」と同じものなのだ。

著作権で守ることはできない。

だから、NHKが莫大な製作費をかけたドラマを、

他局が許可なく使えるという衝撃的な結論になる。

 

ラジオ業界の人でも、この基本的な事実を知らない人は多い。

もしラジオ関係の仕事をする場合、意識しておこう。

 


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悪魔の契約 ~ 著作権譲渡について

今回は、一部のクリエイターから忌み嫌われている

著作権譲渡」について、ちょっと考えてみよう。

 

 クリエイターの目線から

あなたはフリーの若手イラストレイターだ。

自分の仕事に誇りを持っている。

 

ある日、塗装業の会社から依頼が来た。

「弊社は塗装ひとすじの会社です。

 技術力には自信があります。

 このたび創業30周年を迎えることになりました。

 これを機に、より多くの人に弊社のことを知ってもらいたいのです。

 弊社のイメージキャラクターを作っていただけないでしょうか?」

 

塗装業界のことはぜんぜん知らないが、

ギャラも悪くなかったので引き受けることにした。

担当者から塗装技術について色々と教えてもらい、

刷毛、エアスプレー、電着塗装などの機器を体に取り付けた

オリジナルキャラクター「ぬりぬり君」が完成した。

いい出来栄えだ。

 

そこへ、担当者から契約書案が送られてきた。

「弊社の総務部から、ちゃんと契約を結ぶように言われました。

 お手数ですが、内容をご確認ください」

 

読んでみると、気になる文章が見つかった。

「「ぬりぬり君」の著作権は譲渡します。

 著作権法第27条と第28条の権利も含みます」

 

これは、何かマズイ気がする!

 

先輩イラストレイターに相談してみた。

お酒を飲むといつも著作権について熱く語っている頼りになる先輩だ。

 

契約書をこっそり見せてみた。

「これはいけないよ!

 著作権の分のギャラは貰ってないでしょ?

 著作権はクリエイターの大切な権利なんだよ!?

 それをタダで奪おうとするなんて!

 クリエイターからの搾取だよ!

 それにこの「著作権法第27条と第28条」っていうのは、

 アニメ化、ゲーム化、着ぐるみ化の権利なんだ。

 その権利も取り上げようとするなんて!

 なんて悪質な会社なんだ! 

 悪魔に魂を売り渡すような契約にサインしちゃダメだよ!

 もっとクリエイターとしての誇りを持てよ!

 ここが頑張りどころだぞ!」

 

先輩にそう言われると、すごく不平等な契約に思えてきた。

腹が立ってきた。

塗装会社に思い切って返事をすることにした。

著作権譲渡なんて聞いてません。

 「ぬりぬり君」は私が精魂込めて作った大切なキャラです。

 あなた方にお譲りするつもりはありません。

 この話は無かったことにしてください。

 どうしても著作権が欲しければ、倍のギャラを払ってください」

 

発注者の目線から

この返事をもらった塗装会社の担当者は、ビックリしてしまう。

どうして!?

30周年のキャンペーンは来月に迫っているのに!

なぜ急にイラストレイターさんが怒り出したのか、ぜんぜん分からない!

着ぐるみを作ってイベント会場で活躍してもらうつもりだったのに。

このキャラクターはイベント後も自社のキャラとして

末長く使っていくつもりだ。

大切なキャラだから、手厚くギャラも払っているつもりだ。

そのことは、打ち合わせの席でちゃんと説明もしている。

今のところ予定はないが、

いずれはアニメのCMを作って流せたら良いなと思っている。

だから「著作権譲渡」と書いただけだ。

それを今になって急にゴネだすなんて!

キャンペーンの予算は使い切っているから、

今さら倍額なんて払えるわけがない!

なんて悪質な人なんだ!

もう二度と頼むか!!

 

キャンペーンはキャラクター無しで寂しく実施された。

イラストレイターはギャラを貰い損ない評判も落とした。

 

悪いのは誰?

こんな事件が起きてしまったとして、

悪いのは誰だろう?

 

まず言えるのは、

事前にしっかりと条件を確認しなかった両方ともが悪いということだ。

 

クリエイターもプロとしてやる以上は、

仕事を引き受ける前にしっかりと条件を詰めよう。

自分を守るためには、それしかない。

気を付けるべき点については、以前の記事で書いた通りだ。

 

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もちろん、依頼した会社にも責任がある。

しっかり確認した上で発注しないといけない。

世間の常識から考えても、個人よりも企業の方がちゃんとすべきだ。

何かあったときに責められやすいも、個人より企業だ。

 

(この取引が「下請法」という法律の対象になる場合で、

 著作権譲渡にしてほしいときは、企業から出す発注書に

 「著作権譲渡です。金額には著作権の対価も含みます」

 と書かないとダメです!という行政の指導もあったりする)

 

取引するときは、お互いに条件を確認しあう。

ここまでは、常識と言って良いだろう。

 

本当に悪魔の契約なのか?

クリエイターも発注企業も、両方が悪い。

でも、もう1人❝悪い人❞がいると思う。

 

クリエイターの先輩だ。

 

彼が後輩に「悪魔の契約だ!」と吹き込んだから、

今回の悲劇が起きてしまった。

 

でも、著作権譲渡を「悪」だと決めつけて良いのだろうか?

 

そもそもが企業のキャラクターなのだ。

常識的に考えて「その会社のものである」と考えるのが、

自然ではないのか?

 

仮に著作権譲渡しなかったとして、

エアスプレーや電着塗装を装備した「ぬりぬり君」を、

個人のイラストレイターが将来的にどう活用するというのか!?

誰にも使われず、死蔵されてしまうだけだろう。

「ぬりぬり君」にとっても不幸な話だ。


企業の側もクリエイターを騙して搾取しようなんて思っていない。

具体的に決まっているキャンペーンの内容は隠さず説明もしている。

ただ、将来の全ての可能性を1つ1つ説明できないだけだ。 

 

「自社のもの」を自社で今後も色々と使う。

そのためのキャラクターを制作する。

そういう、大まかな共通認識はお互いにあったはずだ。

それを契約書という形式に落とし込んだときに、

著作権譲渡」という言葉になることがある。

それだけの話だ。

 

一部のクリエイターは「著作権譲渡は悪だ!」と信じている。

そういう人は、「著作権譲渡」という言葉を見ると熱くなる。

ひどい!搾取だ!と言い始める。

 

冷静になろう。

その取引の本質を見よう。

著作権譲渡にするのが自然なケースもある。

「譲渡」にせずに「許諾」にすれば十分なこともある。

譲渡をした上で「ただしアニメ化のときは追加でギャラを」という

条件を付ければ良いときもある。

「作者としての名前は表示する」という点だけにこだわれば

済むこともある。

契約条件は「0か?100か?」ではない。

どこかに丁度良いポイントがきっとある。

「100%の悪」も「100%の正義」もない。

話し合おう。

 

その上で、目の前の仕事に全力を尽くし、相手に喜んでもらおう。

これこそ、クリエイターの誇りをかけるべきポイントだ。

 

著作権にこだわるべきシーンもあるが、

こだわり過ぎるのは良くないのだ。

 

覚えておこう。

 

 

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冬の日差しに感謝しよう

冬の本

本格的な冬が来る前に、読んでほしい本がある。

 

八甲田山死の彷徨』

 

戦後に活躍した小説家・新田次郎氏の傑作だ。

 

 

日露戦争が目前にせまっていた時期。

ロシアとの戦いに備えるため、

日本陸軍は寒冷地での予行演習をする必要があった。

雪と寒さの中で、どれだけのスピードで移動できるのか?

どんな装備や食料が必要なのか?

そこで、青森県の2つの部隊に

真冬の八甲田山を踏破させてみることにした。

 

軍の上層部は軽く考えていたが、

冬山の厳しさは想像を絶していた。

観測史上最大の寒波が襲ってきていた。

命がけの任務となった。

 

吹雪がつづき全く先を見通せない中、

胸の高さまである雪の中を泳ぐように進む隊員たち。

手足の感覚が失われていく。

持ってきた食料はカチコチに凍って食べられない。

それでも進まないといけない。

あたりは一面真っ白だ。

ただただ、寒い。

疲れた。

何も考えることができない。

眠ってしまいたい。

 

こんな隊員を率いる隊長には、ものすごい重圧がかかる。

作戦を成功させないといけない。

遭難してしまえば、自分のせいで隊員の命が奪われる。

でも、先は全く見通せない。

この道で正しいのか自信がない。

進むべきか?戻るべきか?

休憩したくても休むと体温が下がって危険だ。

悩んだ末に決断をくだしても、上司や部下が言うことを聞かない。

どんどん追い詰められていく・・。

 

2つの部隊のうち一方は、

周到な準備と隊長の果断な行動のおかげで

全員が生きて山を下りることに成功する。

 

しかしもう一方は、

準備不足、指揮系統の乱れ等によって遭難してしまう。

隊員は次々と凍死し、部隊はほぼ全滅となった。

 

 実際に起きた悲劇をモデルにした物語だ。

 

寒さの描写

新田氏は山の厳しさを書き続けた作家だが、

この小説での寒さと疲労の描写はすさまじい。

 

「彼等は歩きながら眠っていて、突然枯木のように雪の中に倒れた。二度と起き上がれなかった。落伍者ではなく、疲労凍死であった。前を歩いて行く兵がばったり倒れると、その次を歩いている兵がそれに誘われたように倒れた。」

 

「雪の中に坐りこんで、げらげら笑い出す者もいた。なんともわけのわからぬ奇声を発しながら、軍服を脱いで裸になる者もいた。」

 

「「小便がしたい、誰か釦(ボタン)をはずしてくれ」

 と悲痛な声で叫ぶ者がいた。返事をする者はなかった。寒さと睡(ねむ)さで頭が朦朧としていて他人の世話をする気も起らないのであった。尿意を催して、叫ぶ者はいい方であった。声も発せずそのまま用便をたれ流す者が出てきた。異常な寒さのために急性の下痢を起こすものがあった。ズボンをおろしたくても、手が凍えてそうすることができなかった。悲惨を通りこして地獄図を見るようであった。自らの身を汚した者の下腹部は、その直後に凍結を始めた。彼等は材木が倒れるように雪の中に死んでいった。」

 

 

感想

読みながら、その恐ろしい描写に圧倒されてしまう。

冬山に立ち向かう人間の無力を思い知らされる。

適切な温度、風速、視界、食料・・

そういったものがたまたま揃っているから、

我々はこうして生きていられるのだ。

 

人工知能がもてはやされる時代でも、

ネット上で無限の選択肢を得られても、

拡張現実で自分の能力が上がったように感じても、

人間はどこまでいってもフィジカル(物理的・肉体的)な存在なのだ。

 

この本を読み終えた後に外出した。

良い天気だった。

暖かい太陽の光に包まれた。

幸せをジーンと感じた。

 

 おススメ

本格的な冬が来る前に、ぜひ読んでほしい。

冬の日差しだけでハッピーになれる。

太陽は無料だ。素晴らしい。

 

小説に登場する人物もみんな魅力的だ。

 

任務に対して真剣だからこそ、

部下や案内人へ冷たい態度をとる徳島大尉の二面性。

平民出身だというコンプレックスをバネに

頑張ってきた神田大尉の無念。

悲劇を引き起こした悪者として描かれる山田少佐の涙。

道具のように扱われる案内者たちの悲哀。

 

誰に対しても感情移入できる。

 

文章も非常に読みやすい。

これが50年前に書かれたものとは思えない。

技巧にたよらず平易な文を積み重ねることで、

これだけ心を揺さぶる小説が書けるのだ。

私もこんな文章が書けるようになりたい。

 

八甲田山死の彷徨』はおススメだ。

 

この作家の作品が気に入ったのなら、短編集も読んでみてほしい。 

 

 

自然の厳しさを肌身に感じると同時に、

自分のおかれた環境に感謝できるようになる。

 

冬は自宅に閉じこもって、本を読もう!

 


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