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コロナ下の世界で文化芸術を守る意味はあるのか?

以前の記事に書いたとおり、

コロナウイルスとの戦いは長期戦になりそうだ。

 

台湾やニュージーランドなどのように

「短期集中決戦」でコロナをやっつけて、

後はのびのびと生活する選択肢もあったはずだが、

日本人は違う意思決定をした。

生活を緩めたり締めたりを繰り返しながら、

ダラダラと戦いを長引かせる道を選んだようだ。

 

よほどの幸運がない限り、この状態があと数年は続く。

そのぐらいのつもりでいた方がよい。

 

文化芸術の危機

この状況で多くの人が経済的に苦しんでいる。

あらゆる業界の人が叫んでいる。

「援助が必要です!」

補助金をください!」

 

舞台芸術やライブイベントを生業にしている人たちも同様だ。

「3密」の状況を意図的に作り上げ、

場を盛り上げることが仕事だった彼らは、困り果ててしまっている。

 

●新型コロナで西田敏行が政府に“俳優の危機”を訴える、過去にも“仕事仲間”を激励

https://news.yahoo.co.jp/articles/6d462c9c459cebb4efde27ce25b6ba5dac327873

 

少しずつ援助の仕組みができつつあるようだが、

まだまだ全然足りない状態だ。

 

●緊急事態舞台芸術ネットワーク

http://www.jpasn.net/

 

少しでも早いコロナの終息と、

安心して文化芸術を楽しめる毎日が戻ってくることを心から願っている。

私も何か良い方法がないか知恵を絞りたい。

 

文化芸術は守られるべきか?

ただし、現状の問題点も指摘しておきたいと思う。

 

援助を求める彼らの多くが口にするのが、以下のような言葉だ。

 

「日々の食糧、水、物資と同じように、

 文化芸術だって人間の豊かな生活のためには欠かせないものです。

 今失われてしまえば、もう取り戻せなくなります。

 だから文化の担い手である我々は守られるべきなのです」

 

この主張、多くの人に賛同してもらえるものだろうか?

文化芸術を仕事にしていない人や、

多くの業界から悲鳴を聞かされ続けている政治家や役人を納得させ、

「その通りだ!あなた方を優先的に援助します!」

と言わせられるだけの理屈になっているだろうか?

 

私にはそうは思えない。

 

主張の内容が正しいかどうかはともかく、

人の心を動かすだけの強い説得力を持っていないように感じる。

 

理由は以下の3つだ。

 

1.本当に失われたら取り戻せないのか?

文化芸術の活動は楽しい。

とてつもなく楽しい。

自分を表現し、多くの人に賞賛してもらえればなおさらだ。

だからこそ、多くの若者が夢をもってこの業界に飛び込んでくる。

嫌な想像だが、数年後にコロナが終息したときに

多くの俳優や歌手が廃業しているかもしれない。

それでも俳優や歌手になりたい!という人が途切れることはないだろう。

製造業の世界で多くの中小企業の社長が

「今廃業してしまえば、世界で唯一無二の我が社の加工技術が

 失われてしまう。人材難だが何とかして後継者を見つけないと!

 若者には見向きもされないが、何とかしないと・・」

と焦っているが、

エンタメの世界はそんな悩みとは無縁なのだ。

 

2.どちらにせよ取り戻せない

文化芸術は、人間の個性に頼っている部分が大きい。

俳優の高倉健さんが亡くなった後、

彼と同じ存在感を放って演技できる役者は出てきていない。

彼の役は彼にしかできない。当然だ。

今失われようが、将来失われようが、

どちらにせよ取り戻せないものなのだ。

もちろん、他の役者に受け継がれる役者魂やテクニックのようなものは

あるだろう。

しかし、製造業の技術と比べると再現度が段違いに低いことは間違いない。

どうせ失われるものを、なぜ今守らないといけないのか?

 

3.文化の担い手はあなただけなのか?

文化は様々な形で存在する。

高尚な舞台の上だけにあるものじゃない。

母親が子供に聞かせる子守唄や、町の落書きだって、文化だ。

街中のカラオケ店には、プロと名乗る人より圧倒的に人の心を動かす

歌唱を披露する素人だっている。

みんなが文化の担い手なのだ。

なぜ、あなた方だけが保護される必然性があるのか?

 

上記3つの理由をみれば、文化芸術の担い手の主張が、

一般の人にはイマイチ説得力がないのが少しは理解してもらえると思う。

 

それでも、文化芸術は守られるべきなのか・・・?

 

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ここまで読んだあなたの頭の中には、

色んな反論が浮かんでいると思う。

 

その反論を練り上げてほしい。

そして、新しい強固な理屈をもつ主張として発信してほしい。

 

それが

文化芸術への援助が今よりもっと手厚くなることにつながるはずだ。

 

コロナとの長期戦にそなえ、

「それでも文化芸術を守るべきだ!」

と堂々と言える理論をじっくり作り上げる時期に来ていると思う。

 

 

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