こんな質問があったので、簡単に答えておきたい。
『ぱいどん』
漫画の神様・手塚治虫さんの❝新作❞漫画をAIの力で生み出そう!
というプロジェクトから生まれたのが『ぱいどん』だ。
今なら前後編が全てネット上で読めるようになっている。
●「TEZUKA2020」キオクシア公式サイト
https://tezuka2020.kioxia.com/ja-jp/
かなりニュースでも取り上げられたので、
記憶に残っている人も多いと思う。
事実
この質問をした人は、そもそもの事実認定が間違っている。
『ぱいどん』を作ったのは、AIではない。人間だ。
たしかに大量の手塚作品等を学習したAIが出力した
「キャラクターデザイン」と「プロット(物語の骨格)」を
使っていはいる。
でもそれだけだ。
そのままでは使い物にならないようなデザインとプロットを、
人間のクリエイターが苦労して使えるレベルにまとめあげ、
それをもとに人間が脚本、ネーム等をつくり、
作画を行って完成させている。
「ぱいどん」は人間製なのだ。
「ぱいどん」に著作権はある。
アイデアに基づき、
実際に汗をかきながら具体的な表現に落とし込んだ人こそが、
著作権の持ち主になる。
『ぱいどん』の著作権は、
人間のクリエイター(もしくはその人の所属する組織)のものだ。
そろそろ冷静に
手塚プロも、いつまでも「鉄腕アトム」や「ブラックジャック」に
頼ってばかりもいられない。
新しい人気キャラがほしい。
AIの研究者も、
この分野が注目を浴びているうちに名前を売っておきたい。
研究予算もほしい。
そんな両者の思惑が一致したのだろう。
こうして「AIが作る手塚治虫の新作漫画!」という
話題になりやすいプロジェクトがスタートしたと思われる。
しかし以前の記事でも触れた通り、
文化芸術の分野ではAI創作なんてものは❝お寒い状況❞だ。
まともなレベルの漫画が作れるわけはない。
実際には人間が作るしかなかった。
(彼らもそのことを隠しているわけではない。
ただ、AIを前面に出してアピールしているだけだ)
それが現実だ。
AI創作の記事に触れる我々も、冷静にならないといけない。
例えば、
人気アイドルが立ち上げたファッションブランド。
「全て私がこだわってデザインしました!」
多くのアイドルはこう言うが、我々はそれを鵜呑みにすることはない。
「きっと裏ではヤリ手のプロデューサーと本物のデザイナーが
やってるんだろうな。
アイドルはちょっと意見を言ったり、
ラフなイメージ図を描いたりしただけなんだろうな」
と分かっているはずだ。
今となっては、AIもアイドルと同じようなものだ。
ただの広告塔にすぎない。
「AIが作った!」
こんな記事を見ても、冷静に受け止めよう。
クリエイターは
私がこんなことを言うのは、
本当のクリエイターが可哀そうだと思うからだ。
『ぱいどん』が多くのメディアで取り上げられ話題になったその日、
きっと場末のスナックでこんな会話が交わされていたはずだ。
「ママ、知ってるか?
今話題の『ぱいどん』。
世間ではAIが作ったとか言われてるけど、
ここだけの話、本当は俺が作ったんだぜ。
でも、俺の名前じゃ話題にならないから、
AIが作ったってことにしてるんだ。
自分の作品が奪われたような気がしてくやしいよ・・
ママ!水割りもう1杯!」
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よほどのブレイクスルーが起きない限り、
AIが意味のある作品を創作できるようにはならない。
もう一度、人間のクリエイターを正当に評価しよう。
https://twitter.com/Kei_Yoshizawa_t