マネー、著作権、愛

創作、学習、書評など

英雄になるのは義務ではない

One World: Together At Home

コロナと戦う医療関係者を称え支援するために

オンライン上のチャリティーライブ

「One World: Together At Home」が実施された。

レディー・ガガを中心とした世界的アーティストたちが

自宅から世界中の医療関係者へエールを送った。

 

鑑賞した私は、違和感を強く感じた。

 

番組はこんな素敵なメッセージから始まる。

We may be separated.

But we are not aloe.

(私たちは離れ離れになっている。でも、一人じゃない。)

 

そのあとは命を救うために必死で戦う医療現場の人々。

彼らに感謝をささげる人々。

「彼らは本物の英雄だ・・」

そんな感動的な映像の後にライブが始まる。

 

アーティストたちは、みんな自宅からの出演だ。

彼女ら、彼らは、カメラに向かって語る。

「この歌を最前線で戦うヘルスケアワーカーに捧げる。

 私たちの心はいつもあなたと共にあります。

 彼らに祝福を。サンキュー」

 

そして持ち歌を披露する。

音響設備が整わない部屋での演奏なので、

正直なところクオリティが高い音楽とは言えない。

それでも精一杯の熱唱だ。

 

次々にビッグアーティストが登場する。

メッセージの内容は、だいたい同じようなものだ。

医療関係者への感謝と応援。

 

そんな内容だった。

 

アメリ

このライブを見ていて違和感を感じたのは、

私が日本人であり日本的な文化に慣れているからだろう。

 

アメリカでは・・・。日本では・・・。

と「二項対立」でものごとを見るのは時代遅れだ!と言う人も多いが、

やっぱりアメリカと日本の文化の差は大きい。

無視して良いわけがない。

 

アメリカは戦争によって独立を勝ち取り、

「独立宣言」に代表される理念によって国の形を作った国だ。

理念の下に集い、敵と戦い、国を守る。

最前線で戦う人は英雄だ。

そんな世界観(「文化」や「物語」と言ってもいい)を持っている。

 

アメリカは戦争の度に、この世界観が盛り上がる。

歌、映画、コミックなどの文化も総動員される。

第二次大戦のときもそうだった。

最近になって人気が再燃した

キャプテン・アメリカ」は、

アメリカの兵隊をヒーロー化するために生まれたキャラクターだし、

ハリウッド映画の名作「カサブランカ」も

悩んだ末に戦争に参加する主人公をすごくカッコよく描く。

メッセージはこうだ。

「正義のために戦おう!

 悪者ヒットラーをやっつけろ!

 最前線で戦うあなた方は英雄だ!」

 

ベトナム戦争イラク戦争では、

時代の変化もあり、この物語が上手く機能しなかった。

 

しかし今回は、昔ながらのアメリカ物語が完全復活した。

❝コロナ戦争❞で戦う人々へ

アーティストがメッセージを送っている。

「命のために戦おう!

 悪者コロナをやっつけろ!

 最前線で戦うあなた方は英雄だ!」

 

「One World: Together At Home」は、

きわめて伝統的なアメリカ物語なのだ。

 

日本

日本人である私は、そこに違和感を覚えてしまう。

 

「英雄だ!」と言って持ち上げておいて、

命のリスクを押し付けているだけなんじゃないの?

 

あまり褒めたたえすぎると、

彼らの逃げ道がなくなってしまうんじゃないの?

 

がんばりたくてもがんばれない元医療関係者が、

罪悪感をかかえることになってしまうんじゃないかな・・?

 

最前線での献身的な努力が尊いことは間違いないし、

彼らを応援するアーティストたちの善意も素晴らしいけど、

全面的にはノレない・・・。

そんな感覚がある。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

日本でも先の大戦では文化が総動員されて

兵隊さんを英雄視する歌や物語は多く作られた。

でもアメリカと違ってそれが戦後も定着することは無かった。

結果的に戦争に負けたせいでもあるし、

戦後教育(「WGIP」のような・・)のせいもあるかもしれないが、

元々、日本にそういう世界観が希薄だったからではないか。

 

平家物語」や「判官びいき」や「熱闘甲子園」に

見られる敗者への目線。

万葉集の防人の歌や、

与謝野晶子の「君死にたもうことなかれ」に見られるような

1人の弱い人間への目線。

そんなものの方が、日本人の心にはしっくりきてしまうのだ。

 

今回の❝コロナ戦争❞でも日本で話題になったのは

女優の杏さんが弾き語りで披露した

「にげなさい かくれなさい」

(つまり、英雄になるより自分の命を大事にしろ!)

という歌詞だった。

 

●杏『教訓1』cover

https://www.youtube.com/watch?v=8Oo_DaRTJWM

 

アメリカ人の物語と、日本人の感性。

戦時中には文化の差が際立って目立つようになる。

 

とりあえず今言えるのはこれだけだ。

 

各国の多様な文化を守るためにも、家にいよう!

 

 

Twitter

https://twitter.com/Kei_Yoshizawa_t

 

www.money-copyright-love.com