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テレビ局 VS 文化庁 VS 規制改革推進会議 大混戦のゆくえは・・?(4)

前回までの記事で基本的な部分を解説した。

 

・「放送」と「インターネット」は、

 著作権的には全く別物として扱われている。

 

著作権の世界には「権利者」と「利用者」しかいない。

 その違いを意識することが大切。

 

今回は、放送局の立場から「権利者」と「利用者」を考えてみよう。

 

権利者か?利用者か?の3層構造

テレビ局が番組をつくって放送するとき。

テレビ局は「権利者」だろうか?

それとも「利用者」だろうか?

 

答えは、「権利者でもあり利用者でもある」だ。

 

テレビ局の活動は3つの階層に分けて考えると理解しやすい。

 

第1階層:番組をつくる。

第2階層:番組が完成する。

第3階層:番組を放送する。

 

本当はもっと細かい場合わけや階層分けが必要なのだが、

シンプルにするためにまずは3階層で理解しよう。

 

番組を作る

先週の例にならってピカソの絵で考えよう。

あるテレビ局がピカソの絵や人生を紹介する番組を制作する。

たくさんのものが必要だ。

ピカソの絵。

資料写真。

ピカソを演じる役者。

役者が演じるための脚本。

背景音楽(BGM)。

などなど・・・。

 

テレビ番組を作るとき、テレビ局は「利用者」だ。

たくさんの権利者に

「番組制作につかわせてください。放送させてください」

と言って許可をもらわないといけない。

 

番組が完成する

 すべての権利者の許可がそろい、無事に番組が完成する。

できあがった番組は「著作物」になる。

テレビ局は、この番組の「権利者」だ。

テレビ局の許可がないと、

誰もこの番組を放送したりネットに流したりできない。 

 

番組を放送する

 テレビ局は自分でつくった番組を(普通は)自分で放送する。

 この「放送する」という行為について、

あらたな権利が発生する。

その権利の「権利者」はテレビ局だ。

これを「放送事業者の著作隣接権(ちょさくりんせつけん)」という。

 

この部分、ちょっと分かりにくいかもしれない。

考え方を少し丁寧に説明しよう。

 

小説、絵画、音楽などは素晴らしい。

我々は作品から多くの喜びと生きるための力を得ることができる。

芸術家の「作品を生み出す」という行為は、尊いものである。

だから、芸術家に権利を与えよう。

これが「著作権」だ。

 

同じように考えると、

芸術家が生んだ作品を「人々に伝える」という行為も尊い

伝える人がいないと我々に素晴らしい作品が届かない。

だから、伝える人にも権利を与えよう。

これが「著作隣接権」だ。

 

インターネットで誰もが世界に発信できるようになった現代、

「伝える行為が尊い」と言われてもピンと来ないかもしれないが、

昔はそうではなかった。

一部の限られた人にしかできないことだった。

だから権利を与えようということになった。

 

では、誰に与えるか?

法律をつくる過程で色んな綱引きがあったが、

最終的には以下の人たちになった。

・実演家(役者や歌手など)

・(音楽などを)録音する人

・放送局(日本ではケーブル放送局も)

 

出版社は仲間に入れてもらえなかった。

インターネットも入っていない。

 

放送局が権利を与えられるためには「伝えるという行為」、

つまり放送するだけで良い。

なぜなら、その行為は尊いから。

 

例えば、ディズニーがつくったアニメ映画を

フジテレビがそのまま放送した場合。

映画の著作権はもちろんディズニーのものだが、

放送されたその電波に関しては、

フジテレビの権利がプラスオンされることになる。

 

つまり、その放送を録画してインターネットで流すためには、

ディズニーだけでなくフジテレビの許可も必要になる。

フジテレビは単に放送しただけなのに。

 

これが「放送事業者の著作隣接権」という特殊な権利だ。

 

3層構造

まとめると、こうだ。

 

・テレビ局が番組をつくるときは、利用者。

・できあがった番組については、権利者。

・それを放送すると、追加の権利の権利者になる。

 

テレビ局が関係する著作権の話は、

この3つが整理されずにゴチャゴチャになってしまうことが多い。

政府の推進会議で話されているのは主に第1階層の部分の話だが、

会議の参加者の思惑の中で第2階層や第3階層の発想も

入り乱れる。

どんどん分かりにくい議論になる。

 

混乱しないように、まずは上記3つの階層を頭に入れておこう。

 

 

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