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契約書はアートだ!(1) 心構え編

契約書クイズ

今回は、今までで一番実用的な話をしたい。

契約書との向き合い方についてだ。

 

あなたがフリーで活動しているクリエイターだとしよう。

どこかの企業から取引の話が舞い込んでくる。

「わが社のウェブをデザインしてほしい」という話かもしれないし、

「あなたのブログを出版させてほしい」という話かもしれない。

 

いい話だったので、あなたは依頼を引き受ける。

ある程度の仕事が進んだところで、先方から契約書が送られてくる。

担当者からは

「弊社の決まりなので、サインして送り返してください」

と言ってくる。

 

さあ、ここでクイズです。

あなたが最初に取るべき行動は、次のうちどれでしょう?

 

1.契約書を読まずにサインする。

2.契約書をしっかり読んで内容を確認する。

3.瞑想する。

 

さあ!

正解は・・・・!?

 

正解は「3.瞑想する。」だ。

冗談ではない。

本当だ。

 

契約書を読まなかった場合

「 1.契約書を読まずにサインする。」

これが不正解なのは誰にでも分かるだろう。

 

契約書にサインすると、あなたには法律的な義務が生まれる。

よほどおかしなことが書かれていない限り、

その内容には必ず従わないといけない。

つまり、あなたの貴重な人生が契約書によって拘束される。

読まずにサインするなんてあり得ない。

 

「そんなこと当たり前じゃないか!分かってるよ!」

と多くの人が思うだろう。

 

でも、あなたは生命保険に入るときに「約款」をちゃんと読んだだろうか?

会社の社員になるときに「就業規則」や「雇用契約書」を確認しただろうか?

ネットに文章や写真をアップロードするときに

SNSの「プライバシーポリシー」をチェックしているだろうか?

(ちなみにこの「はてなブログ」にも「利用規約」がある)

はてな利用規約

https://www.hatena.ne.jp/rule/rule

 

人は、けっこう気軽に契約書にサインしたり、

「同意する」のボタンを押したりしているものだ。

 

生活の色んなシーンで契約が関わってくる。

その全てをチェックするのは現実的ではないが、

せめて「あ、いま自分は契約している」と意識しながら生きていった方がいい。

 

契約書を読んだ場合

「2.契約書をしっかり読んで内容を確認する。」

契約書を読まないよりは、はるかにマシな態度だ。

 

しかし最初に契約書を読んでしまうと、

そこに書いてあることが思考の出発点になってしまう。

「なるほど。こういうものなんだ」と思わされてしまう。

内容に不満を感じたとしても

「この部分、少しだけ変えてもらえないか?」

という発想になる。

 

契約書に慣れ親しんだベテランの人でも、

まず最初に契約書を読んじゃっている人が多い。

そして「この印税の比率、5%じゃなくて6%で主張するべきじゃないか?」

とか「危険負担の範囲をかえるべきだ」などと言っている。

 

違う。

そこではない。

本当は契約の枠組み自体がおかしくて

著作権のライセンス」にすべきものが

著作権の譲渡」になっているというのに・・!

 

こういう事例はとても多い。

最初に契約書を読んでしまうから、根本的なことに気付けないのだ。

 

瞑想する場合

契約を結ぶときは、まず「瞑想」しよう。

これが正解だ。

 

目を閉じよう。

自分の心の奥底を見つめよう。

本当の自分と対話しよう。

 

自分とは何者なのか?

何のために生きているのか?

人にどう記憶されたいのか?

大切なものは何か?

譲れないものは何か?

 

こんな問いかけの中から、確かなものが見つかったら目を開けよう。

それを言葉にして書きとめよう。

相手の契約書に影響をうけていない、自分の生の声。

これが、あなたにとっての「契約条件のもと」になる。

 

あとはそれを具体的な条件に落とし込んでいくのだ。

 

あなたにとって大切なのは

「とにかく有名になること」かもしれない。

「一人でも多くの人に作品に触れてもらうこと」かもしれない。

その場合は、自分の名前の表示の仕方やリリース戦略にこだわろう。

 

「作品を大切にしてもらうこと」が譲れないポイントなら、

著作権を誰が管理するのか?や、

勝手に内容を変えられる条件になっていないか?に気を付けよう。

 

「一攫千金をねらいたい!」

これがあなたの心の叫びなら、対価の条件に心を砕こう。

最初の金額は低く設定してあっても、

もし大ヒットした場合には上乗せできる契約にならないだろうか?

交渉してみる価値はある。

 

契約するときは、まず瞑想しよう。

自分の魂から一番熱いものを引き出し、それを具体的に表現していくのだ。

こう考えると、契約は単なる事務作業ではないことが分かるだろう。

契約は、あなたが作品を創作するのと同じぐらい

アーティスティックな活動なのだ。

 

契約書の本

世の中には「契約書をちゃんと結びましょう」と書いている本は多い。

 

ほぼ全ての本に、こんなことが書いてある。

「契約書をしっかり読まないと、恐ろしいことが起きますよ!」

「うっかりサインしたせいで、〇〇社は〇億円も損しました!」

「契約を結ぶときは専門家に相談しましょう!

 (その専門家である弁護士や行政書士が書いた本であることが多い)」

 

ここで言っていることは正しい。

油断して契約すると痛い目にあうこともあるし、

専門家に頼らないと手も足も出ないこともある。

でも、こんな本を読んでいるとますます契約書のことを

嫌いになってしまいそうだ。

読まずにサインしたり、誰かに丸投げしたくなってくる。

 

これらの本には一番大切なことが書いていない。

最初に理解すべきなのは「契約書はアートだ!」ということだ。

 

契約書は、

「面倒くさいけど嫌なことが起きないように仕方なくやること」ではない。

そんな後ろ向きな話ではない。

もっと前向きで創造的なプロセスだ。

 

契約書をきっかけにして、

自分を見つめ、自分の創作活動の意味を定義することができる。

クリエイターとしてのあなたの生き方そのものを発揮する場になる。

 

契約書には情熱的にこだわろう。

最初のうちは、堅苦しい文章を読みこなすのに苦労すると思う。

でも慣れててくると、どんどん楽しく取り組めるようになってくるはずだ。

 

反論いろいろ

「そうは言われても、契約書に注文をつけるのは難しいよ・・」

と感じるクリエイターも多いだろう。

そう感じる理由は、だいたい以下の3パターンに当てはまる。

 

1.まだ駆け出しのクリエイターだから何かを要求できる立場じゃない。

2.相手と気まずくなるのが心配。

3.どうせ変わらない。

 

 

実績がない

「まだ駆け出しのクリエイターだから何かを要求できる立場じゃない」

あなたが本当にそう感じているのなら、それはその通りなのだろう。

契約書にごちゃごちゃ文句を言えば、

「この話は無かったことにしましょう」

と言われてしまうかもしれない。

 

でも、その場合でも自分の魂と対話することを忘れてはいけない。

自分が一番大切にしたいことは?譲れないことは何なのか?

それを問いかけた上で、

それでも相手の条件を飲んでもいいと思えるのなら、OKだ。

 

少しずつ実力をつけて

「あなたじゃないとダメなんです」と言われるようになり、

条件交渉できる立場を目指そう。

 

遠慮

「相手と気まずくなるのが心配。」

これは、日本人らしい遠慮の気持ちだ。

 

先方の担当者はすごくいい人で、信頼関係もある。

それなのに、今さら契約条件のことで要求したりしたら、

気分を害してしまうんなじゃいか?

相手を信用してないと思われちゃうんじゃないか・・?

 

その「すごくいい人」である担当者は、

まさにあなたのその気持ちを突いてきている!

「信頼してください。悪いようにはしませんから」などと言って、

契約書にサインを求めてくる。

(その担当者自身が、本当にそう思い込んでいることも多いが・・)

 

「担当者の気持ち」と「自分の魂から生まれた要求」、

どちらが大事だろうか?

そう自分に問いかけた上で、判断しよう。

本心をかくさずに交渉し、相手と本当の信頼関係を築こう。

 

諦め

「どうせ変わらない。」

こう思って、最初から交渉を諦める人も多い。

特に相手が大きな名の知れた企業だったりすると、その傾向が強くなる。

 

あなたと向き合う担当者もそこを突いてくる。

「これが我が社のフォーマットですから、変えられないんです」

「うちの法務部は厳しくて」

「みなさん、これでサインしています」

 

私の経験上、

どんな大きな企業相手であっても交渉すれば変えられるケースは結構ある。

相手は「変えられない」と言うかもしれないが、

それは単にその人が社内のやり取りを面倒くさがっているだけだったりする。

架空の「法務部の厳しい人」をでっち上げているのかもしれない。

 

ビビらず、自信をもって交渉しよう。

 

アメリカの

誰もが名前を聞いたことがあるアメリカのコンテンツ系の企業と

契約のやり取りをしたことがある。

 

相手は上記3つのポイント全てを突いてきた。

人の好さそうな日本法人の担当者(日本人)が

ニコニコしながらこう言ってくるのだ。

アメリカ本国に確認しないと修正できないんですが、難しいですよ」

「おたくとの取引は初めてですから、無理だと思います」

「ここは私を信用していただけませんか?

 実際には契約書に書いてあるような強硬なことはしませんから」

 (この担当者、おそらく数年後には転職しているのだが!)

 

こんな場合でも、長期でタフな交渉をする覚悟があれば、

契約書の内容を修正するのは不可能ではない。

実際、少しずつだが変えてもらうことは出来た。

 

駆け出しであっても、担当者がいい人であっても、

大企業相手であっても、自信を持っていこう。

 

契約書の心構え・まとめ

契約書は、自分の魂を見つめるアートだ。

自分の中でブレないものを見つければ、

どういう契約にすればいいか自然とみえてくる。

 

もちろん、ときには専門家に頼ることも大切だ。

その場合であっても、まずは自分と対話しよう。

あなたのことは、あなたにしか分からない。

そのうえで、あなたのニーズや優先順位を専門家に伝えよう。

こうすれば、スムーズに打ち合わせが出来るようになる。

 

契約書に向き合う前にまず問いかけよう。

「心の声は何といってる?」と。

 

契約書には、明るく楽しく前向きに向き合おう!

 

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次回は、もっと実用的な内容になる予定だ。

契約書の具体的な中身の話をしたい。

 

 

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