マネー、著作権、愛

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契約書はアートだ!(2) 基礎編

アベンジャーズ

アベンジャーズ/エンドゲーム』を観てきた。

いやー、恐れ入りました。

とにかく作りが丁寧。

これだけ大量のキャラクターが入り乱れて戦っているのに、

それぞれの個性を生かした見せ場がしっかりとある。

ヒーローのコラボ作品にありがちな、

各キャラの強さのバランスに矛盾を感じるシーンがない。

そして、一人ずつの人間ドラマを手抜きなくしっかり描く。

制作スタッフが映画に込めた愛と誇りをビンビン感じられる。

 

10年におよぶシリーズの大団円にふさわしい大娯楽作だ。

ぜひ観に行こう!

 

marvel.disney.co.jp

 

 

以前の記事で

アメコミヒーローと日本の漫画ヒーローの差を分析したことがある。

www.money-copyright-love.com

 

日本発のヒーローたちが、

アベンジャーズに負けないレベルで大活躍する日は来るのだろうか・・

 

今後も微力ながら応援していきたい。

 

契約書の心構え

前回の記事では、

クリエイターが契約書を交わすときに大切になる心構えについて書いた。

要点をまとめる。

 

・契約書を読む前に、まずは自分の魂と対話する。

・自分にとって何が大切なのか?を突き詰めて考える。

・怖がらず自信をもって交渉する。

・契約をまとめるプロセスはけっこう楽しい。

 

心構えができたところで、次は契約書の具体的な中身の話をしようと思う。

 

契約書について全ての論点を書こうとしたら、

それだけで分厚い本になってしまう。

できるだけ大切なポイントに絞って説明していこう。

専門家が言うことの少ない「コツ」についても織り交ぜらなら書きたい。

 

今回は基礎的な話をいくつかしよう。

キーワードは「具体的に」だ。

 

譲渡か?許諾か?

あなたの作品を他人に使わせる場合、大きく言って2つの選択肢がある。

 

作品の著作権を「譲渡」するのか?

それとも「許諾」するのか?

 

「譲渡」を選んだ場合、

あなたの作品の著作権を相手にあげてしまうことになる。

「許諾」なら、著作権をあなた自身が持ちながら、

相手が使うことを許してあげるという形になる。

 

不動産に例えるなら、あなたが家を持っているとして、

その家を売ってしまうのが譲渡だ。

家は自分で所有しながら人に貸すのが許諾になる。

 

「譲渡か?許諾か?」は、契約書全体の根っこを決める部分なので、

最初に確認すべきだ。

クリエイターのあなたにとっては、著作権を奪われてしまう「譲渡」よりも、

自分で著作権をもてる「許諾」の方が良い条件ということになる。

 

ただし、ものごとはそう単純ではない。

 

契約書に「許諾」と書いてあったとしても、それで安心できるわけではない。

例えば以下のような契約書だったらどうだろう?

(相手企業の名前を「アベン社」としておこう)

 

・あなたは作品の利用をアベン社に許諾する。

・アベン社は作品をこの先ずっと全世界で無制限に利用できる。

・許諾は独占的なものとする。

 (つまり、他の人には一切ライセンスできない)

 

これだと、実質的には「譲渡」したのと同じことだ。

 

逆に契約書に「譲渡」と書いてあったとしても、それが悪いこととは限らない。

こんな契約書ならどうだろう?

 

・あなたは作品の著作権をアベン社に譲渡する。

・ただし譲渡するのは作品の本をつくって販売する権利だけ。

 (それ以外の権利、例えばネットにのせたりアニメ化したりする権利は、

  あなたのもの)

・3年後には、譲渡された著作権をアベン社からあなたに返す。

 

これならほとんど「許諾」と同じだ。

 

「譲渡か?許諾か?」に注目するのは大切だ。

でもそれより重要なのは、

あなたの作品がどう使われるのか?を具体的にイメージすることだ。

できるだけ長期的な目線で考えて、どこまでならOKか?を考えよう。

 

27条と28条

著作権を譲渡することになった場合、

ほとんどの契約書にはこう書かれている。

 

「作品の著作権著作権法第27条および第28条に規定する権利を含む)を譲渡する」

 

この「著作権法第27条および第28条に規定する権利」って何だ!?

と戸惑う人もいると思う。

 

この権利は、大まかにいうと以下の権利のことだ。

 

・小説やマンガをドラマ化、映画化、アニメ化するための映像化権。

・マンガキャラクターをフィギュア、ゲームなどにする商品化権。

・文章を外国語に翻訳する権利。

・音楽をアレンジする権利。

・その他、作品の形式をいろいろと変える権利。

・できあがった映画、ゲーム、翻訳版などの作品を利用する権利。

 

この契約書にサインすれば、

「作品をそのままで使うのではなく、形式を変えて使う権利もあげます」

という意味になる。

そのことをちゃんと納得した上でサインしよう。

 

ちなみに、もし契約書に「作品の著作権を譲渡する」とだけ書かれていて

「第27条・第28条」のことが書かれていなければ、

これらの権利はあなたの手元に残る。

法律でそう決まっている。

 

だからこそ企業の契約書のフォーマットには

著作権法第27条および第28条に規定する権利を含む」と

決まり事のように書いてあるのだ。

 

もし全ての権利を渡してしまうことに抵抗があるのなら、

相手と交渉してみよう。

できるだけ具体的に。

「映像化とゲームの権利はOKだけど、

 キャラクターグッズにする権利だけは持っておきたい!」

など、自分のこだわりを言葉にすれば、

相手にも伝わる。

案外すんなりと話が進むこともある。

 

権利と義務

権利と義務は違う。

当たり前のことだが、これも極めて重要だ。

わかってない人がかなり多い。

 

あなたの契約相手のアベン社は、著作権の譲渡や許諾によって

あなたの作品を使う「権利」をゲットしたことになる。

でも使う「義務」を負ったわけではない。

 

契約をした後でマーケットの風向きが変わり、

アベン社の気が変わるかもしれない。

「この作品、あの時はヒットすると思って契約したけど、

 最近のトレンドとはズレちゃってるんだよね。

 まあ、権利料は払ったけど大した額じゃなかったし、

 今から大金をかけてプロモーションしても大ハズレするかもしれないし、

 この作品をリリースするのは中止しよう」

 

こうしてあなたの作品は

「塩漬け」「お蔵入り」になる。

契約条件が「独占的で長期間」だったら最悪だ。

丹精込めて作った作品は、誰の目にも触れずに終わることになる。

 

アベン社に文句を言うことはできない。

アベン社が買ったのは「権利」であって「義務」ではないからだ。

権利と義務は違う。

このことを肝に銘じよう。

 

「お蔵入り」を避けたければ、

そうならないで済むような条件を探るべきだ。

例えば「3年以内にリリースされなければ、権利が一部もどってくる」

のような契約にできないだろうか?

相談してみよう。

 

人格権不行使

 多くの契約書には「あなたは著作者人格権を行使しない」と書かれている。

これはどういう意味だろう?

 

著作者人格権」とは大まかに以下の権利のことを言う。

 

・作品の内容やタイトルを勝手に改変させない権利

 (改変とは、小説やマンガのキャラクターを変える。ストーリーを変える。

  デザインの色や形を変える。など)

・クリエイターの名前を表示するかどうか決める権利

 表示するなら、どんな名前で出すか(本名?ペンネーム?)決める権利

・クリエイターの評判を落とすような使い方をさせない権利

 (例えば、いかがわしいお店の広告に使わせないとか)

 

(※上記3つ目の権利は、多くの解説書には書いていないが、

  著作者人格権の内容に入る可能性が高い。

  逆に、作品を公開・公表する権利のことを書いている本は多いが、

  実質的な意味はあまりない)

 

つまり、「著作者人格権を行使しない」という契約書にサインする以上は、

あなたはこう言っていることになる。

「内容を変えられてもいいです」

「私の名前を出さなくてもいいです。他人の名前で出されてもいいです」

「私の評判が落ちるような使い方をしてもいいです」

 

あなたは本当にそれでOKなのだろうか?

 

契約書に「人格権を行使しない」と書かれてあったとしても、

実際に相手の企業がムチャなことをするケースは少ないだろう。

あまりにも酷すぎることをしていたら、

契約書にサインがあっても裁判で勝てる可能性はけっこうある。

 

それでも、契約書は契約書だ。

本当に裁判になれば、厳しい戦いが待っている。

自分がいったんは「OK」とサインしているのに、

「そんなつもりでOKと言ったんじゃないんです!」と

苦しい主張をしないといけなくなる。

 

「人格権を行使しない」の契約書にサインするなら、

覚悟をもった上ですべきだ。

 

「どうしてもイヤだ!」と思ったら、相手と交渉しよう。

ここでも大切になるのは、具体的な話をすることだ。

 

 

「契約書を拝見しました。

 ここに「人格権を行使しない」と書いてありますけど、

 あんまり意味が分からなくて・・・。

 教えていただけないでしょうか?

 具体的にはどういうことなんでしょう?」

 

「いや~~、具体的に何かを想定しているわけじゃないんですけどね。

 フォーマットには全てこう書かれているんです。

 あまり心配しなくて良いですよ」

 

「そうなんですね。

 でも、一応プロとしてサインするんで、内容は分かっておきたいんです」

 

「そうですか。じゃあ、説明しますね。

 著作者人格権というのは・・・・(教科書的な説明)」

 

「ありがとうございます。よく分かりました。

 ということは、内容を変えられたり、私の名前が出されなかったり、

 変な場所で使われたりしてしまうってことでしょうか・・?」

 

「いやいや、実際にはそんなことありませんよ!ご安心ください!」

 

「そうですか・・

 もちろん、〇〇さんのことは信頼しています。

 でも、契約書にサインするとなると、

 慣れていないので心配になってしまって・・

 契約書に書いてあるってことは、

 ごく稀にそういうことも有り得るってことですよね?

 具体的には、どういうケースで内容を変えられたり、

 名前が出されなかったりする可能性があるんでしょう?」

 

「まあ、具体的にはこんな場合です。

 漢字の表記の仕方を時代に合わせて変えるとか、

 ユーザーから間違いを指摘されたときに内容を一部カットするとか。

 広告のスペースが足りないときには、名前を出さないこともあります」

 

「なるほど。それなら納得です。

 じゃあ「人格権を行使しない」という書き方ではなく、

 今言ったような具体的なことを一つずつ書く方式にしませんか?

 その方がお互い誤解がなくて良いと思うんです!」

 

こうやって自分の作品を守ることも、ときには大事になってくる。

覚えておこう。

 

法律用語・業界用語

見慣れない言葉や法律用語・業界用語が出てきたら、

ためらわずに相手に意味を聞くべきだ。

全然恥ずかしいことではない。

そして、その言葉をより具体的な意味の分かる言葉に変えていこう。

契約書を変えるのが無理だと言われてしまった場合でも、

相手の説明のメモを作ってとっておこう。

あとで何かあったときの証拠になるかもしれない。

相手からメールで説明してもらい、それを保存しておくのも良い方法だ。

後になってモメてしまったときに

「あのときこう説明してたじゃないですか!」と主張する材料になる。

 

「0か100か?」ではない。

契約書の条件は「0か?100か?」ではない。

その中間で折り合える地点は必ずある。

 

著作権の譲渡か?許諾か?」

「27条・28条の権利を含む全ての権利か?」

「人格権の行使を認めるか?認めないか?」

こんな大まかで抽象的な論点で

「YESでないならNOだ!」みたいな話をしても不毛だ。

 

相手が欲しいものは何か?

自分が譲れないものは何か?

具体的な話をしよう。

 

著作権の全てではなく、

「日本国内で2年間だけのインターネット独占権」だけが欲しいのかもしれない。

 

パズドラゲームにだけは改変も含めて自由に使えるようにしたい。

 そこだけはクリエイターからも口出しされたくない」

というのが本音かもしれない。

 

クリエイターとしても

「今回の作品については、とにかく早めに支払ってくれれば、

 どんな条件でも飲みます」

ということだってあり得る。

 

具体的に、正直に、話をしよう。

 

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次回は、

「新規で発注を受けたとき」や「すでにある作品を使わせるとき」など、

場合わけをして考えてみたい。

 

 

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