日本人は海外の人に評価されるのが大好きだ。
特に明治以降は欧米の白人に認められることが無上の喜びになった。
だから、いつも欧米をお手本だと考えてしまう。
コロナウイルス対策でも、
台湾やニュージーランドなど近所に素晴らしいお手本があるのに、
わざわざ欧米をマネて
中途半端でどっちつかずのやり方になってしまう・・・。
綱吉
今回は、歴史上の偉人の話をしよう。
14人いる中でトップの評価を受けているのは誰だろうか?
欧米で一番評価が高いのは、五代将軍・綱吉ではないだろうか。
あれ?
徳川綱吉って、「生類憐みの令」で有名なあの綱吉?
「人よりも犬を大切にした」と言われ
「犬将軍」というお馬鹿なニックネームをつけられている、
あの綱吉??
たしかに日本国内では新井白石などが悪口を書き残したせいもあり、
綱吉の評価は低い。
犬を大切にするというトンチンカンな政策を強引に推し進めた
残念な君主だったというイメージが定着してしまっている。
しかし海外からの評価は全然ちがう。
大きな改革を断行した理想的な君主だったと言われているのだ。
綱吉の業績
綱吉が将軍になったとき、幕府の権力は老中たちに握られていた。
しかし彼は身分は低いが実力のある人材を登用し、
彼らに実務を任せることで実権を取り戻した。
武士たちが「下々のことだ」と注意を払わなかった
町人、商人たちの慣習に口を出し、
商売や道路交通のルールを細かく取り決めた。
幕府の財政は危機的状況にあったが、
「貨幣改鋳」という一種の金融緩和をやりきることで乗り切った。
これらの政策のおかげで経済が大きく成長した。
庶民の文化が爆発的に発展し華やかな「元禄文化」が生まれた。
支配者層である武士たちの規律を重視し、
積極的に儒教の講座をひらき意識改革を促した。
「君たちは民衆の支配者ではない。
民衆への奉仕者(公僕)になりなさい」
とメッセージを発し続けた。
福祉政策も手厚かった。
捨て子の保護や子供の養育支援が義務付けられた。
旅行中の病人が治療を受けられるようになった。
牢屋にいる罪人の健康管理も配慮されるようになった。
今まで見捨てられていた社会的弱者が守られるようになった。
もし当時の世界にSDGs(持続可能な開発目標)があったとすれば、
日本はダントツの1位になっていたに違いない。
そんな綱吉の「生類憐みの令」である。
くだらない政策であるはずがない。
当時はまだまだ戦国時代の気風が残っていた時代だ。
武士が気に入らないと思った相手をその場で斬り捨てるなんてことが、
当たり前だった時代だ。
弱いものが強いものにおびえながら暮らしていた。
そこへ将軍が
「生き物を大切に扱え!
犬を大切にしろ!
犬を虐待なんかしたら絶対ダメだぞ!
従わない者は厳しく取り締まるぞ!」
と命令を発した。
何度も何度も、繰り返し繰り返し命令を出した。
悪質な違反者は厳しく処罰した。
世間の評判がわるいことも、
後世の歴史家にバカにされるかもしれないことも、
おそらく綱吉は分かっていたと思う。
それでも諦めず、自分の政策を貫いた。
その結果、数十年後には世の中の空気がすっかり変わっていた。
武士が乱暴に刀を振り回せなくなった。
当たり前だ。
犬をいじめるだけで処罰されるんだから、
人間を斬るなんて出来るわけがない。
平和で、庶民が文化を楽しめる世の中がやってきた。
綱吉が時代を変えた。
彼の治世の後半は、未曽有の災害に次々と襲われた。
江戸の大火事。
大地震。
富士山の噴火。
科学的知見のなかった当時、多くの人が
「政治が悪いせいで神様が怒った!もう世界の終わりだ!」
とパニックになった。
それでも綱吉は諦めず、迅速な災害対策を行った。
人口密集都市の江戸で飢饉や暴動が起きてもおかしくなかったが、
起きなかった。
庶民のあいだに綱吉の政治への信頼感があったからだろう。
法と秩序は守られた。
綱吉は現代の視点からみても先進的な政治理念をもち、
周囲の無理解な批判に耐えながら、
圧倒的な実行力と継続力で改革をやり遂げた。
綱吉の海外での評価が高いのは、当然のことなのだ。
おすすめ本
綱吉に興味がある人は、以下の本が面白い。
『黄門さまと犬公方』
(山室恭子)
資料を読み解きながら、
推理小説のように少しずつ綱吉の真実の姿に近づいていくプロセスに
わくわくする。
『逆説の日本史15 近世改革編 - 官僚政治と吉宗の謎』
(井沢元彦)
綱吉の凄さを非常に簡潔に分かりやすく説明してくれる。
『ケンペルと徳川綱吉 ドイツ人医師と将軍との交流』
(ベアトリス・M・ボダルト=ベイリー)
ドイツ人の客観的な目線から
ありのままの姿で綱吉時代の日本を教えてくれる。
『犬将軍 綱吉は名君か暴君か』
(ベアトリス・M・ボダルト=ベイリー)
長い本だが、綱吉の思想の背景まで踏み込んで考察されている。
歴史上の偉人に思いをはせながら、じっくり読んでみてほしい。
もし綱吉なら、コロナの脅威に対してどんな対策をしただろうか・・?
コロナは社会的弱者を次々と餌食にしていくウイルスだ。
弱者への目線を忘れなかった綱吉なら、
きっと徹底的なコロナ撲滅策をとったのではないか・・。
コロナ対策に関しては、欧米に目を向けすぎるのは良くない。
日本の歴史については、欧米の評価をもっと気にする方が良い。
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