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テレビ局 VS 文化庁 VS 規制改革推進会議 大混戦のゆくえは・・?(2)

前回は、テレビ局が

「放送とインターネット(同時配信等)を同じ扱いにしてほしい!」

と主張している様子を紹介した。

 

今回は著作権的に「放送」と「インターネット」がどう違うのか?

について基本的なところを解説したい。

 

法律の条文を使って説明すると難しくなってしまうので、

条文は使わず、たとえ話で解説したい。

 

水道水と宅配水

あなたが自宅にいて「水がほしい」と思うなら、

代表的な方法は2つある。

 

1つ目は、蛇口をひねって水道水を出す方法。

 

2つ目は、業者に注文して水を宅配してもらう方法。

アクアクララのような業者が有名)

 

水道水は非常に便利だ。

常に自宅まで水が来ている。

あなたは蛇口をひねるだけでいい。

その代わり、水の種類を自由に選ぶことはできない。

どの家にも同じ水が来ている。

 

一方で、宅配水はあなたが何もしない限りは水は来ない。

まず注文する必要がある。

ひと手間かかるが、その代わりに自分の好みの水を選ぶことができる。

 

水道水を提供するのは、水道局。

宅配水を提供するのは、水の宅配業者。

どちらの責任が重いだろう?

 

もちろん、水道局だ。

より多くの人の健康に責任をおっている。

だから、水の安全性をたもつために様々な規制がある。

水の宅配業者も守らないといけないルールはあるが、

水道局の比ではない。

規制のおかげで我々は安心して水道水を飲むことができる。

 

放送とインターネット

放送とインターネットの違いは、

水道水と宅配水の違いとだいたい同じだと考えて良い。

 

あなたが情報がほしいとき、

放送(テレビやラジオ)とインターネットの

2つの選択肢があるとしよう。

 

テレビ局は電波塔からずっと電波を流しているので、

あなたの自宅には常に情報が届いている。

あなたはテレビのスイッチを入れるだけでいい。

その代わり、見れる番組のチャンネル数は限られている。

お隣さんと同じものを同時に見ることになる。

 

一方、インターネットではあなたが何もしない限り情報は来ない。

まず検索などを行い、情報をリクエストする必要がある。

その代わりにネット上にちらばる無数の情報から、

自分の好みのものを選んで見ることができる。

 

放送を提供するのは、放送局。

ネット情報を提供するのは、

ネット上にいる無数の情報提供者(と回線業者)。

 

放送局の方が「正しく有益な情報」を伝えることについて

重い責任をおっている。

 だから、放送局には様々な規制がかけられている。

 

違い

著作権的にみた「放送」と「インターネット」の違いは、

法律の条文では「公衆に」「同時に」「無線」「自動的に」などの言葉で

細かく定義されているが、

とりあえずは、こんな感じで理解すれば良いと思う。

 

放送

・常に手元まで情報が届いている。

・みんなに同じものが同時に届く。

・見る人が積極的に情報を選べない。

・規制が多く限られた人しかできない。

 

インターネット

・自分から情報を取りにいく。

・見る人が自由に情報を選べる。

・規制が少なく誰でもできる。

 

まずは、上記を覚えておこう。

 

生真面目さ

数十年前。

インターネットという新しいものが生まれたとき

(「キャプテンシステム」などが流行っていた!)に、

「これを著作権的にどう扱えばいいのか?」

「放送とどう違うのか?」

という議論が巻き起こった。

 

優秀な日本の役人たちは

放送とインターネットの技術的な違いについて研究した。

その結果、

「常に手元に情報が来ているか、

 自分から情報を取りに行くかの違いこそが根本的な違いだ!」

という結論になった。

その理解をもとに「放送」と「インターネット」が整理された。

 

日本は世界的にみても技術的な観点からの理解を

特に生真面目に法律に落とし込んでいるようだ。

 

そのことがプラスに働いたこともあった。

送信可能化権」というアップロードに関する権利を

生真面目に作ったおかげで、

ネット上の著作権侵害に対して世界でも最先端の対応をとることができた。

(「ナップスター事件」「ファイルローグ事件」などを検索してみてほしい)

 

逆にマイナスに働くこともある。

今回、規制改革推進会議で話題になっているように

「技術的には違っても、

 ユーザーにとっては放送もネットも今や同じだ!

 なぜ扱いが違うんだ!」

ということになってしまう。

 

現在起きている議論は、生真面目さが生んだという面もあるのだ。

 

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放送とインターネットの違いを理解した上で、

次回は放送する側(つまりテレビ局)の目線から、

放送やインターネットについて見ていこう。

 

 

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