文化庁の勝利!(?)
世間を騒がせた「ダウンロード違法化問題」。
改正法案が国会に提出された。
文化庁の執念が実ったのだ!
●「海賊版」対策 強化決定…著作権法改正案 ダウンロード規制
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200310-OYT1T50387/
この法案は本来なら去年国会に提出されて成立するはずのものだった。
しかし「国民が普段からやっていることを違法にするのか!」
という世論の反発をうけ、自民党内部でストップがかかった。
文化庁文化審議会を通過したものが、止められてしまうだなんて、
これまでなら考えられなかったことだ。
文化庁の面目は丸つぶれとなった。
それから1年。
文化庁は雪辱を果たすべく作戦を練り直した。
巧みなパブコメを使って世論の反発をうまく吸収した。
内容を程よく調整しつつ再戦を挑み、国会提出までこぎつけた。
文化庁の執念による「勝利」と言ってよいだろう。
ここまでの流れや法律の内容の解説は、以前の記事に書いた通りだ。
例外の例外の・・・
今回は法改正の内容を解説するのはやめて、
簡単なコメントにとどめておこう。
そうしないと、話が細かくなりすぎてしまう。
以前の記事で解説した通り、
ダウンロード違法化をちゃんと理解するためには、
すごく丁寧に理屈の流れを追っていく必要がある。
1.大前提として、ダウンロードはOKだ。
2.でも、〇〇の場合はNGだ。
3.〇〇の場合でも、△△の場合はOKだ。
4.〇〇の場合で△△の場合でも、
◇◇で◎◎の場合はNGだ。
こういう構成になっている。
例外に例外を積み重ねている。
この構造を理解できずに、
2番目の論点なのに4番目の論点と勘違いして
書いている解説記事も見かける。
今回の法改正では、さらに以下が付け加わる。
5.〇〇の場合で△△の場合で、
◇◇で◎◎の場合でも、
♡♡の場合や、※※の場合ならOK。
もはや訳が分からない。
条文案(著作権法第30条第1項第4号)の中では、
1つの文の中に「を除く」という言葉が4回も出てくる。
普通の人には読み解くのが不可能だ。
この件について記事を書いた新聞記者たちにも
上記の全体設計が頭に入っていた人は少なかったようだ。
ちゃんと全体像から解きほぐした記事は見かけなかった。
文化庁が用意した資料の中で
「こういう場合はOKなので安心してください!」
とアピールしている部分(上記「♡♡の場合」や「※※の場合」)
だけを、そのまま書いている記事が目立った。
結果的に、文化庁の宣伝をやる羽目になっている。
「この件をまとめなさい」とデスクから命じられた記者たちも、
よく分からないままに書くしかなかったのだろう。
同情する。
我々はどうすれば?
ダウンロードが違法になった。
我々はもうネット上のコンテンツをダウンロードできないのだろうか?
そんなことはない。
以前の記事に書いた通り、特に気にしなくてよい。
法改正に向けた条文の修正作業が繰り返されたおかげで、
違法になってしまう場合が非常に狭く絞り込まれた。
(そのかわり「を除く」が増えた)
よほど悪質なことをしない限り、違法になってしまうことはない。
どちらにせよ、
「これを機にダウンロードしている人を逮捕してやる!」
と企んでいる人はいない。
警察もそんなにヒマじゃない。
今回は「法改正すること」がゴールだった。
その先はない。
「対策をうってる感」さえ出せれば、それで良かったのだ。
このブログの読者の中に、
「著作権的にすごく悪質な行為を確信をもってやっている人」は
いないと思う。
だから、今まで通りで良い。
自信をもってネット上で活動を続けてほしい。
https://twitter.com/Kei_Yoshizawa