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「文化の盗用」が大流行!! 未来の議論を過去から予習する(1)

文化の盗用!

「文化の盗用(cultural appropriation)」という言葉が

大流行している。

 

コムデギャルソンのファッションショーで、

白人モデルにエジプトの王子をイメージした格好をさせたところ、

「カツラの編み方が黒人の文化を盗用している!」

と批判を浴びた。

 

コムデギャルソンは

「不快な思いをさせたことに深く心から謝罪する」

とすぐに謝った。

 

●コムデギャルソン、ショーのかつらに「文化の盗用」と批判噴出

https://www.bbc.com/japanese/51171801

 

 

クリスチャン・ディオールの香水のCMで

ネイティブ・アメリカンの伝統的な踊りを見せたところ、

これにも「文化の盗用だ!」と批判が殺到した。

ネイティブ・アメリカンコンサルタントを起用して

制作したにもかかわらずだ。

 

ディオールはCMを削除した。

 

商品名「ソヴァージュ」に「野蛮な」という

マイナスな意味が含まれていて、

「俺たちが野蛮だと言いたいのか!!」

という反感を買った面もあるようだ。

(こうなると、もう「文化の盗用」は関係ない)

 

ジョニー・デップ主演の香水CMに批判殺到 ディオールSNSから削除

https://www.cinemacafe.net/article/2019/09/02/63290.html

 

 

キム・カーダシアンが

補正下着の新ブランド「KIMONO(キモノ)」を立ち上げたときも

「文化の盗用だ!」と反対の声が巻き起こり、

取り下げざるをえなくなっている。

 

●キム・カーダシアンが立ち上げた下着ブランド「キモノ」が"文化の盗用"と物議、商標出願に懸念も

https://www.fashionsnap.com/article/2019-06-26/kim-kimono/

 

この騒ぎついては、以前の記事でも書いた通りだ。

 

www.money-copyright-love.com

 

 

「文化の盗用」が大はやりだ。

ネット上でこの言葉が盛り上がれば、

企業の側はほとんど自動的に取り下げ、謝る。

そんなことが日常茶飯事になっている。

 

あのディズニーさえもが怖がっているらしく、

アナと雪の女王2」について北欧の少数民族サーミ人

“協力関係”を結んだという報道もある。

 

要するに

「衣装デザインや習俗についてのコンサルタント料を支払います。

 だから「文化を盗まれた!」とか騒ぐのはやめてね」

ということだろう。

 

●“アナ雪2”制作でディズニーと少数民族が正式な協力関係

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191225/k10012227821000.html

(※記事削除?)

 

 

「文化の盗用」。

この言葉を前面に出せば、ディズニーもひれ伏す。

もはや最強ワードの1つだ。

 

線引きはどこに?

でも、文化の盗用にあたるものと、

そうでないものの区別をつけるのは難しい。

 

ハリウッドでは、長らく日本文化が利用されてきた。

サムライ、カラテ、ニンジャ、ゲイシャ・・・

たくさんの映画が製作された。

ニンジャタートルズ」は文化の盗用なのだろうか?

 

日本では12月25日にクリスマスを祝う。

これはキリスト教文化を盗用しているのだろうか?

でも、そもそもクリスマスのお祭りは、

別の宗教の行事だったのをキリスト教徒が取り入れたのが始まりらしい。

誰が誰の文化を盗用しているのだろうか?

 

中国でオーストリアの町をそのまま再現した町が建設された。

観光客でにぎわっているという。

 

●中国でオーストリアの街並みそっくり再現、「本家」では賛否両論

https://jp.reuters.com/article/tk0819964-china-austria-fake-idJPTYE85305G20120604

 

京都の街並みを再現するビッグプロジェクトも進行中だ。

 

●「国家最大級」の京都再現プロジェクト、中国で進行中。度肝を抜かれる全貌とは?

https://www.huffingtonpost.jp/entry/jingdufengqingjie_jp_5d2d1e2fe4b0a873f6406a45

 

ある意味、最大規模の「文化の盗用」だが、

「KIMONO」ブランドに文句を言った京都市長が、

この計画に反対を表明したという話は聞こえてこない。

「KIMONO」はダメだけど、町そのものをコピーするのはOKなのか??

 

考えれば考えるほど、分からない。

 

こんな状態では企業も判断のしようがない。

ディズニーのように、お金を配ってまわれるだけの体力のある企業だけが

過去の文化を活用する資格があるということか?

 

伝統文化にインスピレーションを受けて創作する芸術家は、

どうすれば良いのか?

「文化の盗用だ!」と言われた時点で「負け」が決定するのか?

 

この問題に答えはあるのだろうか・・・?

 

過去をみよう

実はこれ、最近わきあがった新しい問題のように見えるが、

全然そんなことはない。

 

数十年前から国際政治の場で激しい議論が続けられ、

ほぼ全ての論点が出し尽くされた話なのだ。

 

最近になって議論の舞台が、

政治からネットへと移ったにすぎない。

 

「文化の盗用」という目新しい言葉にネット上のみんなが慣れ、

議論が成熟するにしたがって、

数十年前と同じ話の流れになっていくと思われる。

 

つまり、この問題がどこへたどり着くかは、

過去の議論から学べばよいのだ。

 

未来のために過去を予習しよう。

 

この問題を深堀りすると、めちゃくちゃ面白い。

「我々の文化の正体」が少しずつ見えてくる。

 

次回以降、1960年代まで時間を巻き戻してお勉強していこう。

日本が国際政治の場で(珍しく?)光り輝く様子も

紹介することになるだろう。

 

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