マネー、著作権、愛

創作、学習、書評など

死者に思いを。

おけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

 

「死者の権利」について

この1年を振り返ると、

「亡くなった人の情報の扱い」について

注目の集まることが多かったと感じる。

 

京都アニメーションの放火殺人事件では、

被害にあった方の実名を報道すべきか?

について全国的に熱い議論が繰り広げられた。

 

京アニ放火殺人と実名報道 メディアはどう向き合ったか

https://www.asahi.com/articles/ASM934GRLM93PTIL00R.html

 

「遺族に取材が殺到して迷惑がかかるから匿名にすべきだ!」

「正確な情報の発信が報道機関の使命だ!」

など、さまざまな意見が出た。

 

また、最近では相模原市福祉施設の事件の被害者遺族が

亡くなった娘の名前を公表したことが話題となった。

 

●美帆が生きた 甲Aではなく 

 遺族、娘の名前を初公表…相模原殺傷きょう初公判

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200107-OYT1T50267/

 

母親は

「(娘が)甲さんと呼ばれることは納得いきませんでした。美帆という名前があるのに」

「娘が一生懸命に生きた証しを残したい」

と語っているという。

 

また、年末の「NHK紅白歌合戦」では、

人工知能を使って再現された美空ひばりが出演し新曲を披露した。

これを見て「すばらしい!」と絶賛する人がいる一方、

親友の中村メイコ氏は「いやだ」と拒否感を示した。

彼女以外にも「死者の冒涜にあたるのではないか?」と感じた人が

少なくなかったと思う。

 

●“AI美空ひばり”は「嫌だ」 親友の中村メイコ語る

https://www.1242.com/lf/articles/220704/?cat=entertainment&pg=happy

 

 

人は死ぬ。

死んだ人の思いは、あとに残された者が想像するしかない。

 

死者の顔、死者の声、死者の名前、

彼らが生きていたという事実そのもの。

どの情報が守られるべきなのだろう?

 

どんな方法で守るのが良いのか?

秘密にすべきなのか?

公表をしたうえで、名誉を汚すような扱いだけを禁止するべきなのか?

 

そして、それを扱う権利は誰のものか?

親族なのか?

親友なのか?

メディアなのか?

 

それとも、

死者は「歴史の一部」なので、

全ての人が等しく死者の情報に接し、

自由に扱うことができるようにすべきなのか?

 

 

今後テクノロジーが進歩し「死者の意思」が

ある程度は正確に分かるようになるかもしれない。

(例えばAIとブロックチェーンを活用した「AI遺書」など。)

それでも「死者の意思」に従うことが常に正しいとは限らない。

例えば坂本竜馬のAI遺書が

「姉あてに書いた手紙、公表されるのは恥ずかしいからやめて」

と訴えたとしたら。

貴重な歴史的資料なのに。

美空ひばりのAI遺書が

「もう紅白に出るのはうんざり。

 今年は「絶対に笑ってはいけない」に出たいのよ」

と言い出したとしたら。

それこそ「冒涜」になってしまうのでは?

 

「死者の権利」については、誰にも正解がわからない。

これが現状だ。

残された我々は、

今後も亡くなった大切な人たちに思いをはせるしかないのだろう。

 

著作権と死者

著作権の世界では、死者の扱いについては割とこまかく決められている。

 

作者の死後も作品の著作権は残る。

通常は、作者の死後70年だ。(なが!)

著作権はお金や不動産などと同じように財産として扱われる。

遺族に相続されることが多いだろう。

 

楽家の平尾昌晃の遺産である著作権をめぐっては、

遺族間の“泥沼バトル”がメディアで面白おかしく取り上げられた。

 

●平尾昌晃さんの遺産60億円バトルで浮上「音楽印税ってそんなに儲かるの?」をプロが解説

https://nikkan-spa.jp/1513199

 

 

「財産」ではなく「人格」という面でも配慮がある。

作者が死んだ後であっても、作者が嫌がるような作品の改変や、

不名誉な取り扱いをしてはダメということになっている。

著作権法第60条)

そして、その権利を扱える人は誰か?も決まっている。

原則としては遺族だ。

さらにその順位まで丁寧に書いてある。

「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」の順になっている。

遺言があればそれに従うことになる。

著作権法第116条)

先々のことまで、ひじょうに細かく決められている。

 

 

素晴らしい作品は作者の死後も世代を超えて愛される。

それが理解されているから、

法律も長期的な視点にたった設計になっているのだ。

 

上記の「死者の権利の取り扱い問題」について、

著作権の制度は参考になるかもしれない。

 

去年の記事のふりかえり

著作権をメインテーマにしているこのブログだが、

去年は幅広い内容を扱った。

 

 

人工知能著作権の観点から考察した。

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美術品について掘り下げて考えた。

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著作権を強くするか?弱くするか?

つまり、右派と左派の大きな思想の流れについても概観した。

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世にはびこるJASRAC批判にも反論した。

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歌手とレコード社の大きな戦いについても取り上げた。

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ネット上で話題の「ダウンロード違法化」も解説した。

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日本語、英語、その他ことばの問題についても

歴史や脳の視点から研究した。

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著作権と同じくらい有名な肖像権についても

ストーリー形式で説明した。

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著作権について契約書を結ぶ時のポイントについても

開示している。

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一般に「著作権」といえば特殊な法律の話だと思われているが、

著作権を入り口にした広がりと深みのある世界が存在するのが

分かってもらえると思う。

 

今年は

去年は書きたいことが多かったので、

話題が広がりすぎてしまった。

 

今年はあらためて著作権の基礎に立ち返ろう。

著作権についての基本的な話を、

どんな解説書よりも分かりやすく説明していくつもりだ。

基礎がわかったうえで改めて上記の記事を読んでもらえれば、

さらに理解が深まって良いと思う。

文章以外の表現形式もためしてみたい。

 

読者のみなさま。

今年もお付き合いいただけると幸いです。

よろしくお願い申し上げます。

 

吉沢計

 


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