テレビ局が
「放送とインターネット(同時配信等)を同じ扱いにしてほしい!」
と主張している。
それに対して文化庁が
「そんなことはできない」
と対抗している。
この話をちゃんと理解するには、
著作権の中でもかなり面倒くさい部分の理解が必要になる。
そうしないと、
「規制改革を訴えている改革派(推進会議やテレビ局)と、
というような、底の浅いステレオタイプな物の見方にとらわれてしまう。
私の結論的なことを少しだけ先に言っておくと、
色んな人や団体が色んな主張をしているが、
それぞれの人が長期的な戦略を持って
主張しているわけではないと思う。
誰も明確な見通し持たないままに、
目先の問題に対処するために
当てずっぽうに主張しているだけの状況に思える。
これから、できるだけ解きほぐして説明したい。
権利者と利用者
まずは改めて、基本中の基本から説明しよう。
著作権の世界には2種類の登場人物しかいない。
・権利者
・利用者
この2つだ。
著作物等を利用したいときは、
利用者が権利者から許可をもらったりお金を払ったりして、
利用させてもらう。
著作権の世界は、このシンプルなルールで回っている。
「何を当たり前のことを!」と思われるかもしれないが、
分かっていない人が多い。
例えばテレビ局のスタッフが
「ピカソの絵を番組で使いたい」
と思ったとき。
手元にある「西洋美術全集」に掲載されいてる絵を撮影したい。
スタッフはその本の出版社に電話する。
「もしもし。御社の本の一部を番組の中で使わせてください」
「わかりました。許可しますので申請書に記入して送ってください。
使用料は1ページあたり1万円です。
あと、絵の権利がある場合は、そちらの責任で処理してください」
「わかりました!ありがとうございます!」
こんなやりとりは多い。
テレビ局のスタッフも出版社の窓口の人も、勘違いしている。
「利用者が権利者から許可をもらう」という基本ルールを理解していない。
上記の例の場合、「権利者」は誰か?
当然、ピカソだ。
(本人は亡くなっているので、その権利を預かっている財団等)
では、「利用者」は誰か?
出版社とテレビ局だ。
出版社は「西洋美術全集」を出版するにあたり
ピカソの許可を取っているし、
テレビ局は番組を作って放送するにあたり
ピカソの許可を取らないといけない。
つまり、出版社とテレビ局は「利用者」という全く同じ立場なのだ。
利用者から許可をもらう必要は全くない。
利用者にすぎない出版社に許可をもとめるテレビ局。
自分が権利者のように振るまう出版社。
どちらもトンチンカンだ。
テレビ局のスタッフは、出版社に連絡を取る必要はない。
ピカソの財団に連絡して許可をもらった上で、
出版社には黙って本を撮影すればよい。
(もしピカソではなくゴッホの絵なら、誰にも連絡しなくて良い。
まずは「権利者」と「利用者」。
この2種類の登場人物の関係をしっかり頭に定着させよう。
これが出発点になる。
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